優等生恋情【不死川実弥】 (ページ9)

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「……すみません」

それだけ言うので精いっぱいだった。先生は前へと戻っていく。心臓が止まらない。いや、止まったら止まったで私は死んでしまうのだから正常だ。駄目だ。頭が働いていない。先生の行動一つ一つで私の頭は簡単にかき回される。心音は簡単に乱される。
先生の手は以前と変わらず優しくて温かかった。

先生の手が触れた頭に私も手を伸ばしてみる。これで手を繋いだことにならないだろうか。なるわけないと分かっているのに手が熱くなった。

顔は触れずとも熱さがわかってしまうので下を向いて髪で隠す。頬の温度が他の比じゃない。赤く染まった頬から、自分の気持ちが漏れ出してしまう気がした。

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放課後はコンタクトを買いに行く予定だ。手ごろなドラッグストアを探す。地図アプリを開いて探すと意外と近いことが判明する。

それは商店街の中にあった。タピオカ店やプリクラなどが立ち並ぶ、放課後の寄り道にはうってつけの場所。クラスの女子がよく訪れているのも知っている。
だが私はそれらに用はなくて、一刻も早く抜け出したいと喧騒の中を進む。人混みは苦手だ。とはいえ自分もその人混みの一部となっているのだから文句は言えない。

ドラッグストアは商店街を横切るように走る大通り沿いにあった。賑やかな商店街によく馴染む、水色とも緑色ともとれる看板を掲げている。エメラルドグリーンとはこういう色のことを言うのか。

自動ドアをくぐればふわりと暖気が体を包んだ。暖房がよく効いている。暑いほどだ。店員さんはこれに気付いていないのだろうか。私よりもずっと前からここにいて、しかも動いているのだから暑いはず。

コンタクトを探そうと店内を見回すも、陳列棚の多さに頭が回りそうだ。こういうとき店員さんに聞ければ早いのかもしれない。