優等生恋情【不死川実弥】 (ページ4)

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そう教えると、二人は教科書に書き込みながら黙々と解き始めた。教える側の私は暇になってしまったので、二人を観察することにする。

竈門炭治郎。
髪は少し赤みがかかっている。耳元には花札のようなもの。結構目立つ。なぜ頑なに外そうとしないのだろう。彼が消しゴムを取るたびに耳元で揺れていた。

不死川くんの方はなんだか行き詰まっているようだった。そもそもチェバの定理がよくわかっていないみたいだ。辺のどちらが分母に来るのかわかりづらいのだろう。勝手に彼のペンケースから筆記用具を取り出す。

「ここが、分母になる」
「……っす」

小さくお礼を言われた。先ほどよりもいくらかマシなやり取りができている。横に竈門くんがいるという安心もあるのかもしれないが、もう少し歳月を重ねれば私に対しての苦手意識はなくしてくれるかもしれない。

二人は何とかしてあの問題を理解できたようだ。二人からお礼をもらった。

おまけに、竈門くんから友達認定された。私はこの学校で友人と呼べる人がいなかった。さっきは数学ができるから私に話しかけてきたのだろうが、それでも嬉しかった。何よりあの猛勉強の日々が少し報われた気がした。
問題児が初めての友達。悪くないかもしれない。いつか不死川くんとも友達になれたら、と希望を抱く。自然と頬が緩んだ。

空は赤みがさすどころか暗くなってきていて、自分はそんなに遅くまで残っていたのかと手首の時計を覗く。短い針はⅥとⅦの間を指していた。つまりもう６時過ぎ。

ふと、用事を思い出す。本を返すのを忘れていた。私にとって読書は、独りで暇な休み時間を潰すにはちょうど良かった。だから借りてもあっという間に読み終えてしまう。
明日までにこの本を返却しないと延滞図書の通知が来る。次に読む分も借りたかったが、図書室はもう閉館しているから仕方がない。