55.逃げるわけには ページ17
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轟くんや飯田くんと戦いながら私の方を向くステイン。それを見て、出久が叫ぶ。
「逃げてAちゃん！ステインは刃物を使うんだ！！」
いくら個性での攻撃が効かなくても、物理的な攻撃は効く。私のことを知っているからこそ、逃げてという。
でも…。
「私にはあるべきヒーローの姿なんて知らないけど、兄の仇が現れて周りが見えなくなる気持ちも分かるわ。間違えたなら、それを自覚してやり直せば良い。そうは思わない？」
私の言葉に、ステインが鼻で笑う。
「お前もなかなか、話の通じねぇガキだな！」
今ので完全に、私もターゲットになった。出久を運んでから、と思っていたが、助ける余裕も無くなったかもしれない。
「出久、隙を見て助けるから。」
「僕はもうじき動けるようになるから大丈夫だよ！それよりAちゃん…「逃げない。」」
「皆が戦ってるのに、私だけ逃げるわけにはいかない。」
敵が手にしているのは、刃先の長いナイフ。舞菜さんから剣道を習ったことが、早速活きたようだ。
間合いを詰め、攻撃するのが1番。相手の個性はナイフで傷つけて相手を動けなくするといった感じのものだろうから、私もその個性が使えるかは不明だ。
だからと言って、轟くんに個性を借りている暇もない。彼の放つ攻撃に突っ込んで、その勢いでステインの近くまで行くしかない。
炎を使って戦う轟くんにステインが刃物を投げつける。
「轟くん！」
「ぐぅ…！」
だが彼の代わりに飯田くんがナイフを腕で受け、その場に倒れ込んだ。
「飯田くん！」
「いいから早く！！」
どうやら何か轟くんに頼んでいるらしく、腕の怪我など物ともせずに叫んでいた。
2人の作戦を助けるために、私がステインの気を惹きつける必要がある。
先ほどの轟くんの攻撃の時、私も当たりに行ったため、彼の個性を使える。勢いよく走り込んで、ステインの目の前に炎を放つ。
火力は2倍、温度も上昇…！
私からの攻撃に驚いている所で、一気に間合いを詰めた。武術で相手を落とせれば1番だが、彼相手には通用しないだろう。代わりに、鳩尾の当たりに膝蹴りを入れる。
私の攻撃を受け呻き声を上げたものの、すぐに体勢をもどし、私に向かって刃物を投げつける。私の頬を掠めたナイフを空中でキャッチし、それを舐めた。
一瞬、体が硬直する。
だがそれも瞬時に解け、私はもう一度彼の腹に蹴りを入れた。
「なぜお前…動けている！！」
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作者名：レモネード | 作成日時：2023年12月22日 22時
