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第三十三話 ページ34

「お前が人殺しとかどーでもいいし。殺された奴らの自業自得じゃん」

 今まで隠していたのが馬鹿馬鹿しくなるほど、春太はいともあっさりとそう言ってのけた。

「で、今夜ホントに行くの?」

「……うん」

「わかった。じゃあさ……絶対に死なないって約束して」

 おもむろに右手を伸ばしてきたかと思うと、同じ手を握られる。側から見ればただ握手しているだけに見えるが、その意味合いは決して軽いものではなかった。

「この右手一本すら、()くさないって。絶対に離さないって約束して」

 じゃなきゃ許さないから、と彼は無理やり笑った。

「もし死んだりしたら、Aが一番嫌がりそうなことしてやるから。守りたい奴がいるなら逃げてでも生きて帰ってきて」

 すぐに本気だと分かった。彼ならどんなこともやりかねないと。その一方で『逃げていい』と言ってくれていることも。

「うん……約束する」

 Aは手を握り返した。この手すらも、絶対に奪わせない。


















「三人とも、準備はできた?」

 菅田(すだ)の呼びかけに美々子(みみこ)菜々子(ななこ)は明るく返事し、Aも頷く。

「ソレ、なーに?」

 Aの背負っている武器を指差して菜々子が尋ねる。これは大鉈の形をした呪具で、夏油(げとう)から与えられたものだった。
 術式の影は宿儺(すくな)の指の力を借りなければ呪力の消費も激しい。そのため、強力な呪霊を祓う時には呪具を使って戦うようにしている。

「いいでしょ、コレ。夏油師匠(せんせい)がくれたんだ」

「かっこいいけど次の日筋肉痛になりそう……」

 美々子が言うと、「Aがそういうの振り回してるのって想像できないかも」と菜々子が笑う。Aの細さ故に、ラルゥからも『重さで腕が折れるんじゃない?』と心配されたものだった。

「あ、夏油師匠!」

 Aは夏油に駆け寄ると、おもむろに丸い形をした小さな黒い機械を袈裟の襟元の内側に取り付けた。

「? これは何だい?」

「えーっと……お守りみたいなものです」

 それは盗聴器のような役割をしており、身に付けた人間が死ぬと壊れる仕組みになっている。安否確認のためだが、それは誰にも話していない。

「A、意外と可愛いことするね」

「え!?」

「冗談だよ。ありがとう」

 必ず全員で生きて帰れるように、とAは願った。


 それが叶うことのない望みだということを知らずに。
 

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闍弥嵩 李(プロフ) - 猫かぶりさん» ありがとうございます! いやほんと、ななみん背高いし紳士だし実は優しいし最高ですよね! 芥見先生が『選ぶなら七海にしておけ』と勧める気持ちが分かります! (2021年6月1日 16時) (レス) id: 425bc70507 (このIDを非表示/違反報告)
闍弥嵩 李(プロフ) - 推しLOVEさん» ありがとうございます! 頑張りますね! (2021年6月1日 16時) (レス) id: 425bc70507 (このIDを非表示/違反報告)
猫かぶり - 続きがとても楽しみです!そしてななみん背高いぃぃぃ!!! (2021年5月30日 23時) (レス) id: 94bc23990d (このIDを非表示/違反報告)
推しLOVE - すっごく面白いです!頑張ってくださいね! (2021年5月23日 19時) (レス) id: 5790125387 (このIDを非表示/違反報告)
闍弥嵩 李(プロフ) - 花笠さん» ありがとうございます! (2021年4月17日 15時) (レス) id: 1dd78312f0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:闍弥嵩 李 | 作成日時:2021年2月15日 17時

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