間抜けだった ページ6
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「アーヤッ?!」
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扉の向こう側に居たのは。
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僕達が果てしなく、愛した彼女だった…………………
アーヤはその場に突っ立ち、驚きを隠せない様子。
僕はきっと間抜けな顔をしているだろう。
表情だけでなく、すっかり昔に戻っていた心も、相当な間抜けだった。
見ると、若武も同じような状態。
多分若武も僕と同じで、昔に戻った気になっていたんだろう。
そんな僕達三人の様子を見て、上杉と黒木がクックッと笑っている。
途端にアーヤが我に返り、ドアを閉めようとした。
が、上杉がそれを阻止する。
そして黒木がすかさずアーヤを自分の腕の中に引き寄せた。
「お帰り、お姫様。」
……黒木、よく恥ずかしがらずに言えるね。
挨拶みたいにサラッと。
アーヤはやっぱり赤くなった。
それでも黒木から離れ、僕達を睨みつける。
「なんで家の中にいるのよ。」
もしかしてアーヤ、昨日の電話のこと忘れてる?
「だってアーヤ、昨日電話で言ってたでしょ?家族が親戚の家に行くからぜひ泊まって。って。」
僕がそう言った途端、アーヤは傍目に分かる程ガックリと肩を落とした。
多分、すっかり忘れていたんだと思う。
そこで若武が言った。
「と言う事でアーヤ。一週間俺らここに泊まるから。」
あ、やっぱり泊まるのね。
まぁ、熱だしたアーヤを一人に出来ないからね。
アーヤは目を見開く。
「アーヤ、ひとまず座ろうよ。」
僕の隣の椅子を引いた。
アーヤは渋々といったように座る。
「さて、アーヤ。事情聴取の時間だよ。」
黒木がその細い指を組み合わせてアーヤを見つめた。
途端にアーヤはぐるりんっ、と目を逸らす。
「そういえば、私を部屋に運んでくれたのって誰?タオルを置いてくれたのも。」
まるで話題を変える為に口を挟んだ様子。
聞かれたく、ないのかな。
「そんなの、誰だっていいだろ。」
アーヤの問いに答えたのは上杉。
いつもよりずっと素っ気ない。
あ〜あ、照れてる。
「照れんなって、上杉。
アーヤ。君を部屋に運んだのも、タオルを額に置いたのも上杉だよ。」
あ、普通に言っちゃうんだ。
上杉は頬を僅かに紅く染める。
「ありがとう、上杉君。でも、なんで照れるの?」
アーヤが食いついた。
やっぱり、話題を逸らしたいんだろう。
アーヤ、わかりやすい………
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yuzuka - とっても面白かったです。また色んなお話を書いてください!応援してます (2022年11月2日 20時) (レス) @page45 id: 81843b67d7 (このIDを非表示/違反報告)
ぱんだ - めっちゃ面白すぎて今4周しました!これからも頑張ってください! (2022年8月16日 16時) (レス) @page45 id: 09838c8ac8 (このIDを非表示/違反報告)
柚菜 - あーー、感動しましたいいお話をありがとうこれからも頑張ってください (2022年1月15日 13時) (レス) @page44 id: 1216b927b2 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - お返事ありがとうございます^^*もちろんです!お待ちしています! (2021年4月30日 0時) (レス) id: 7efce59d5b (このIDを非表示/違反報告)
HUMA(プロフ) - ゆいさん» ゆいさんコメントありがとうございます。嬉しいです。あと本当にもう少しなのでどうにか終わらせたいです。最後までどうかお付き合いいただければ幸いです。 (2021年4月29日 23時) (レス) id: 75b28dedc0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:HUMA | 作者ホームページ:https://odaibako.net/u/potage1314
作成日時:2016年7月11日 9時