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No.66 ページ21

結局そのあとは戦う気にもなれず、あの場に居た面子と顔を合わせるのも気まずくてさっさと玉狛に戻ってしまった。誰もいなかったのにホッとしてとっとと自室に篭もってしまう。とはいえ、特にしなくてはいけないことはないのでベッドの上でゴロゴロと転がりながら小説をパラパラと捲っていた

本は元々、玄界の漢字があまりにも分からなかったAを見かねた支部長が漢字ドリルの代わりに簡単な小説数冊を渡してくれたことがきっかけで読むようになったものだ。最初は面倒だと思っていた筈なのに気づけば自分で本屋に赴いて新刊のチェックをするくらいにはのめり込んでいたのだから不思議だ

漢字は大分読めるようになったし(書けるかは別の話だ)ボキャブラリーも増えたと思うのだが何故か心情の読み取り能力は鍛えられない。人の気持ちが分からないのかと言われてもそんなもの本人が言わなきゃ分かるはずもないだろと言って支部長を苦笑させたのが懐かしい。最近はもう諦められているのかそういうものだと割り切られたのかちゃんと口で説明してくれるので有り難い


『本音がわかる能力とかあればいいのにな』


そしたら、揉めたりしなくて済むのにな。そう呟いてころり、と寝返りを打つと欠伸が盛れた。自覚したら一気に襲って来る眠気。ゆるゆるとくっつきそうになる瞼を持ち上げるのも億劫でそのまま夢の世界へと旅立つことにした

・・・

雨に濡れそぼった服が皮膚に張り付く
熱気で炙られた肌がひりつく


鉄臭い匂い。
木々の焼ける匂い。
人の焼ける匂い。
全てがない交ぜになって鼻の奥へと殴り掛かる


瓦礫に脚を取られてたたらを踏む
無残にも破壊されつくした、馴染みのない街並みが目の前に広がっている
Aが視た事もない、地球に居ないはずの未知の化け物が闊歩している

右を見る。
子供が一人脚を押しつぶされて倒れていた

左を見る。
老人が胸を抉られて息絶えていた

引っ切り無しに爆音と轟音が響く。命を刈り取る死神の音

ボッ!!
閃光。

不気味な白い光が前方で瞬く。同時に激しい地響きとガラガラと建物が崩れ去る音

悲鳴、悲鳴、悲鳴

断末魔。命が消える瞬間の声
助けてくれ。懇願の声
お母さん、お母さん。子供の泣き声



逃げなくちゃ、ここで死ぬ

半ば呆然としたように、それでも頭は異様に冴えて。人も化け物もいない奥へ奥へと駆けていった

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ヲタクメガネ - 頑張って下さい=∀=応援してます!面白かったです♪ (2019年2月2日 13時) (レス) id: 3e08522e7d (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - とても面白かったです!続きも頑張ってください(*^^*) (2019年1月27日 19時) (レス) id: 4584690b17 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:βカロチン | 作成日時:2019年1月17日 14時

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