【WT】ゼラニウムの苗を抱く【男主】

No.41 ページ43

怒鳴りながら訓練室に入ってくる鬼怒田開発室長。連絡してから来たにしては早いので恐らく、連絡を受けた時点で既にこちらへ向かっていたのだろう。Aはその姿を見、先日可愛い後輩が口走った信楽焼のタヌキに似てますよね発言を思い出し笑いそうになるのを下唇を噛んで必死に押し殺した


｢鬼怒田開発室長、訓練中にちょっとした事故が起きました。責任の全ては現場監督の僕にあります｣

｢その通りだ！｣

｢いたっ……くない｣

｢防衛隊員が基地を壊してどうする！｣

｢あれぇ、これが正解じゃないの…｣


笑いを押しとどめるのに必死になるAをよそに漫才じみたやり取りをする佐鳥と鬼怒田さん。チョップをしたり襟を掴んでガクガクと揺らしたりしているも佐鳥は今トリオン体だ。ダメージは無い。とはいえ、壁を壊した自分の代わりに現場監督を任されていた先輩が怒られているのに黙っていられる性格ではない千佳は慌てて声を上げた


｢すいません、私が壁を壊しました！｣

｢…東くん、本当かね？｣


この小さい子が？という疑問を顔にありありと貼り付けて現場に居て、壁がぶち抜かれる瞬間も見ていたはずの東の方を振り返る。返されるのは肯定の言葉。


｢それは事実です。彼女がアイビスで開けました。……玉狛支部の雨取隊員です｣

『俺の後輩なんだけどトリオン保有量が物凄くて。多分ブラックトリガー並。さとりも知らなかったわけだしチカちゃんもわざとじゃないし……許してくれませんかね。壁修復するためのトリオンなら俺が提供しますから』

｢玉狛だとぅ？全く、迅といい煌月といいよくもまあトラブルばかり引き起こしてくれるなぁ？まぁいい、煌月、今日は防衛任務は入ってないな？提供してくれると言うならしっぽりと搾り取ってやるわい｣

『きぬたさん、言い方が悪役っぽいです。ほら、もうちょっとかわいく言おうぜ、チカちゃんビビっちゃってるから。いまこそそのマスコット向きの外見を有効活用しましょうよ！』

｢余計なことを言う口はこの口か！？｣

『あててててストップギブギブ俺いま生身』


どうも玉狛＝問題児の巣窟と認定している節がある鬼怒田は要らぬ軽口を叩いたAの頬をみにょん、と伸ばすも千佳が床に頭を擦りつけているのを見て最後にギリっと捻りため息と共に頬から手を離す


｢さて。雨取隊員、といったかな？とりあえず顔を上げてそこに座りなさい｣

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