No.17 ページ19
悲痛そうに言われる言葉、その脳裏に浮かぶのは近界民の襲撃で亡くなられたという姉の事なのだろうか
その後も、近界民を甘く見ていればいつか必ず痛い目を見ると、そしてその時には手遅れなのだと言う
「甘く見てるって事は無いだろう。迅だって、近界民に母親を殺されてるぞ?」
その言葉に三輪は驚愕に目を見開く
「5年前には、師匠の最上さんも亡くなってる。親しい人を失う辛さは、よく分かってるはずだ」
返す言葉が見つからず息を呑む
そんな三輪を見つつ少しだけ笑って見せた
「近界民の危険さも、大事な人を失う辛さも分かったうえで。迅には迅の考えがあるんだと、俺は思うぞ」
その言葉に先日言われた言葉を思い出しギリッと奥歯を噛みしめる三輪を見ていたAが不思議そうな顔をして口を開く
『みわ先輩はトリオン兵に誰か殺されたからそんなに近界民を敵視してるのか?』
恐らくなんの悪気もなく、躊躇いもなく地雷を踏み抜いた発言に三輪の事情を知る者達があちゃーと言わんばかりの面持ちで顔を覆う
「……そうだ。姉さんは何もしていないのにトリオン器官を抜き取られて結果、死んだ。恨みを持つには十分すぎる理由だろう」
『ふぅん、トリオン能力が高くないからトリオン器官だけ回収する…よくある話だな。その言い方だと最期は看取れたんだろ?よかったね』
瞬間、その場が凍りつく。思わずAの顔を凝視するも本当に悪気なく本心から告げているのだろうと嫌でもわかってしまう表情をしていて絶句した。激昂してもおかしくない三輪でさえも目を見開き、自分の理解の範疇に居ない物を見つけたかのような気持ちの悪い物を見るような顔をしていた
『うん?違うのか?だって誰だって誰にも見つけてもらえなかったり気にされなかったりする最期より誰かが自分の死ぬの看取ってくれた方が寂しくないじゃん。みわ先輩にとってもお姉さんにとってもお互い大切な人だったんだろ?なら最期までそばに居てくれたら嬉しいんじゃないのか?』
キョトン、とした顔で当たり前の常識を説くかのような軽さで告げられるその言葉。明らかな価値観の違いを表しているそれはこの平和な国で普通に生活しているなら到底理解出来ないであろうもので。
普段は欠片も見えない少年の中にしっかり根付いたこことは違う、近界の戦場ーーー何時、誰が死んでもおかしくはない環境ーーーで築かれた平和の中では受け入れ難い価値観が顔を覗かせた証拠だった
160人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ワールドトリガー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アキ猫(プロフ) - No.44が蛟龍さんの「トリオンは生体エネルギーである」という小説の10ページ目の文に似すぎていませんか? (2021年6月28日 5時) (レス) id: 5cc706f72c (このIDを非表示/違反報告)
view_kc(プロフ) - 独自の設定がしっかりしてて面白いです!頑張って下さい (2019年2月24日 22時) (レス) id: 83b9dd6e07 (このIDを非表示/違反報告)
きのこの山よりたけのこの里(プロフ) - 本当ですか!!ありがとうございます!楽しみにしています!! (2019年1月18日 7時) (レス) id: a4f66017fa (このIDを非表示/違反報告)
βカロチン(プロフ) - きのこの山よりたけのこの里さん» わ〜!ありがとうございます好きって言って頂けてめちゃくちゃ嬉しいです!続編まだ本文が書けて無くてですね…明日明後日くらいまでにはパスワードも外して公開する予定なので…もうしばらくお待ちください…! (2019年1月17日 19時) (レス) id: 5d2c5598e6 (このIDを非表示/違反報告)
きのこの山よりたけのこの里(プロフ) - この小説めっちゃ好きです!続編に続いてたので、ページに飛んで行ったら、パスワードが掛かっていたので続編のパスワード教えて貰えないでしょうか? (2019年1月17日 17時) (レス) id: a4f66017fa (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:βカロチン | 作成日時:2018年12月29日 19時