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ゴーという音に私の魂は身体に戻る。

一体私は何をしていたのか?

お風呂での記憶が途中で途絶えている……
そう、黒木君の肩を見たんだ………

うっ……止めておこう……思い出してはいけない……

魂が抜けていて良かったんだ、うん、意識が無くなっていて正解。

全身が熱く、ドライヤーの温風が堪らない。
黒木君にニャー(もう止めて)と言う。
「ん、もう大丈夫かな?よく頑張ったね。お利口さんだ。」
ドライヤーを止め、背中の毛並みを押さえる。

「さ、夕食をいただこうか?」
ドライヤーを片手にリビングを出て行く黒木君の後を追った。

黒木君のお手伝いさんは私の食事も用意してくれていて、お腹一杯。
キャットフードなんて食べられるか不安だったんだけど、さすが猫!
人間なら生臭い臭いでも、今の私はお腹がグーと鳴る程そそられた。

勢い良く食べる私をクスクス笑う黒木君。
なんだか楽しそう……

黒木君はいつも一人で食べているの?
やっぱり一人で暮らしているのかな?
淋しくないの?

時々黒木君を見ながら食べていたら、ずっと携帯を触ってる。
友達が多いのは知ってるけど、お行儀が悪いよ、黒木君。

夕食が終わると、黒木君は食器を洗う。
袖を捲り、凛々しい前腕を見せて泡のついたスポンジを持っている。
なんだか貴重な一場を見てるよう。
何をしていても様になるな……

でも……私の胸は重たい。
貴重な一場はあまりにも淋しくて……黒木君の孤独を垣間見るよう……

居たたまれなくなってキッチンから出て行った。
リビングへ戻ると落ち着かなくてウロウロ歩き回る。
すると、ソファの真下に何かある。
頭を低くして潜り込み、薄い箱を手で弾く。
フローリングを勢い良く滑った箱は、丁度リビングのドアを開けた黒木君の足にまた当たった。
あ、ごめん……
近寄って黒木君を見上げながら一声謝った。

屈んで手に取ると、暗い笑顔を見せた黒木君。
「やっぱりミミは天使だね。こんな物まで見つけてしまう……」
ん?こんな物?

「久しぶりに見ようか………ミミと一緒なら……」
私と一緒なら何?
それって、DVDだよね?
ケースをよく見てなかったけど、映画かな?
もしかして! 黒木君、実は超アイドル好きとか!?

・・・・

そんな訳ないよね……

お腹一杯の私は一つ大きなあくびをしながらDVDをセットする黒木君の後ろ姿を眺めた。

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り一 - この薬のんでみたい! (2020年5月22日 14時) (レス) id: a9605826b0 (このIDを非表示/違反報告)
千祥(プロフ) - 葵さん» めっちゃ褒めすぎですよ、葵さん(汗)でも楽しんでいただけたなら嬉しいです。ありがとうございました。 (2019年4月20日 23時) (レス) id: b78f8b2173 (このIDを非表示/違反報告)
- なんと表せば良いのか分からないくらい、読んでいてワクワクしました!凄く想像力が豊かだからこそこんなに素晴らしい作品が書けると思うので、ほんと尊敬します(p^-^)p (2019年4月19日 22時) (レス) id: 5cf405873d (このIDを非表示/違反報告)
千祥(プロフ) - みなみさん» 読んでくださり、ありがとうございました。いくつか掛け持ちをしているのでメドがたってから作りたいと考えています。妄想は絶えずしてますので、ネタはあるんですが(^_^;) また新作を出した時にはよろしくお願いいたします。 (2018年11月25日 0時) (レス) id: b78f8b2173 (このIDを非表示/違反報告)
みなみ(プロフ) - また新しい作品読みたいです!応援してます! (2018年11月24日 21時) (レス) id: 405036adca (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:千祥 x他1人 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2017年3月28日 0時

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