夢のおくすり

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程よく冷めた牛乳を飲みほし、再びソファで一息つく。
ふとテレビを見ていたチビを見ると、頭が前後に揺れていた。

「奈子、寝るなら自分の部屋で寝てちょうだい。」
立花がテレビを消してチビを促すと目を擦りながらユラユラ歩いてくる。
俺は咄嗟にソファから飛び下り、チビの視界に入らないよう、そして見つからないようソファの後ろを様子を伺いながら移動した。

「あれ？猫ちゃん？」
チビは俺がソファにいないことを不思議に思っている。

逃げた答えは明白。
チビと一緒に寝れるかっつうの。
人の時だって他の誰かと一緒に寝るなんて息が詰まりそうになるのに、チビなんかと一緒に寝られる訳が無い。
このままどこか隠れていよう。

「奈子、この子連れて行ってよね。ここに置いてて悪戯されると困るから。」
しまった……チビに気を取られ、立花がソファの先にいたのを忘れてた……
ヒョイッと立花に持ち上げられた身体から力が抜ける。
あぁ、俺って間抜け……

「うん、分かった！猫ちゃん、一緒にねんねしようね。」
あっさりチビに渡されてしまった俺。
チビに抱えられたまま部屋へと強制連行された。

二階へ上がってすぐの部屋。
入ってまず目に入ったのは勉強机。
きちんと整理してあって、側には浜田の制服が掛かっている。

え？……ここって……立花の部屋？

部屋の真ん中にカーテンがあって、ローベッドが置いてある。

猫なのに、猫だけど！
立花の部屋に初めて入った事にドキドキしている。
もしかしてKZのメンバーで初めてじゃね？俺。
別に誰にも言わねーけど、ちょっと得意な気分になる。
が、現実(？)は甘く無い。
俺が連行されたのはカーテンの向こう、チビの部屋。

何だ？この部屋……
立花と同じようにローベッドと机があるんだが……
ベッドを囲むように本や折り紙が置いてある。
本も折り紙も重ねて整えてはあるが……立花のは“整理”、チビのは“片付け”。
姉妹でも根本的美的感覚が違うんだな……

「猫ちゃん、見て見て。」
床に座ったチビは折り紙を一つ置いて自慢気に見せる。
そして折り紙の端を軽く指先で弾くように押さえると、折り紙が跳ねた。

あ、カエルなんだ……
カエルのお尻の部分を弾くとピョコッと跳ねる。
チビは挑発的な目で何度も繰り返す。

……が…我慢できねー！

俺だよ？
いつもなら、こんな子供騙しに喜ぶ訳無い。
なのにカエルに飛びつくは、戯れるは。
本能って恐い……止める事ができない！

やっぱりこんな夢、イ、ヤ、だ〜！

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