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黒木君の悲しい瞳を見ていると、胸が締め付けられる。
私……ミミと言う猫がいなくなると、黒木君はあの家で独りになってしまう……
また独りきりで“自分”と向き合わなくてはいけないのだろうか……
私の中に躊躇の輪ができて、蟻地獄のように沈んで行く私……
………人間に戻ってもいいのかな?
「ミミ……心配しなくてもいいよ……大丈夫……」
頭を少し傾け、微笑む顔に泣きそうになる。
ごめん、黒木君……
彩に戻ったら黒木君の事、もっと教えてね。
あなたは“自分”に怯えるような人では決してないから!
「Get your head out the clouds!!」
私が複雑な思いでいると忍は私を黒木君の顔に突き出した。
私の口と黒木君の唇がくっつく。
黒木君は咄嗟の事で面食らってるみたい……
私もビックリして身動きできない……
……忍……苦しい……
ギュッと押しつけられたままの口元……息ができない……
く、苦しい……忍、離して……
くる……し……い………
クッと喉が鳴る……たすけ……て…………
.
あ゛あ゛っうっっ!!
布団を蹴り上げ、跳ね起きて全身で息をする。
はぁぁぁ……死ぬかと思った………
肩を上下に大きく呼吸を繰り返す。
その時ふと目下に見えたのは人の手。
自分の意思でゆっくり上げてみてもそれは人間の手……私の手だ……
あ……私、人間に戻れたんだ……
嬉しさに思わず拳を作り、自分の大腿を軽く叩く。
叩いている感触も大腿の叩かれている感覚も確実に私へと繋がっている。
私は“立花彩”に戻れた!
「やっったー!」
万歳と両腕を上げると、パジャマを着ている事に気づく。
夢………だったの?………
そっか……そうだよね………
あまりにもリアルだったから現実かと思った……
でもそんな事、あるわけ無いよね……
もしかして……小塚君の薬を飲んだから?
小塚君……薬は失敗だったよ……
『彩!休みだからって、いつまで寝てるの!?』
階段の下からママの怒る声。
「起きてる、起きてるよ!」
慌てて返事をして時計を見るとビックリ!
今日は若武の家に集合することになってたから。
服を着替えながらぼんやり考える。
黒木君はどんな夢を見たんだろう………
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り一 - この薬のんでみたい! (2020年5月22日 14時) (レス) id: a9605826b0 (このIDを非表示/違反報告)
千祥(プロフ) - 葵さん» めっちゃ褒めすぎですよ、葵さん(汗)でも楽しんでいただけたなら嬉しいです。ありがとうございました。 (2019年4月20日 23時) (レス) id: b78f8b2173 (このIDを非表示/違反報告)
葵 - なんと表せば良いのか分からないくらい、読んでいてワクワクしました!凄く想像力が豊かだからこそこんなに素晴らしい作品が書けると思うので、ほんと尊敬します(p^-^)p (2019年4月19日 22時) (レス) id: 5cf405873d (このIDを非表示/違反報告)
千祥(プロフ) - みなみさん» 読んでくださり、ありがとうございました。いくつか掛け持ちをしているのでメドがたってから作りたいと考えています。妄想は絶えずしてますので、ネタはあるんですが(^_^;) また新作を出した時にはよろしくお願いいたします。 (2018年11月25日 0時) (レス) id: b78f8b2173 (このIDを非表示/違反報告)
みなみ(プロフ) - また新しい作品読みたいです!応援してます! (2018年11月24日 21時) (レス) id: 405036adca (このIDを非表示/違反報告)
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