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「え!? 困るよ、僕今からお出かけだったのに! ねえ折角おろしたての上衣も用意したっていうのにさあ、ああいう奴らって空気とか読めたりしないの!? ……いや、理性無き者に読む空気無し、か──!」
「乞い、願い、祈りを捧げる必要などありません。私が来たのですから。その
「お……お待たせしました! 待った? 待ってない? うそ」
「寒そうだったからと、君が仰るものだから……」
【その他】
生前について結論から言えば、九重綺沙良は神の使いでも何でもなかった。乳飲み子は歯の生え揃わぬうちに母親から離され、産後間もない母はそのショックから狂い叫び、慟哭して、岩に頭を打って死んだ。父は知らない。兄や姉、弟妹の存在も彼は知らない。掘っ立て小屋も良い所の廃堂──劣悪な環境──で、ろくな栄養も、陽の光も与えられなかった子供は、不思議なほどの生命力で18歳まで生き延びた。
叙云学院に来た頃──もっと言えば、執克として顕現した頃──の九重綺沙良は、ひどく衰弱し、虚ろな双眸の、捨てられたボロ犬のようであった、と彼を保護した叙云職員は語る。事実、生前まともな教育ひとつも受けられていなかった彼は、文字の読み書きはおろか、箸の持ち方、衣服の着脱すらもままならない状況であった。会話すら覚束ない(言葉を発さない)状態であったため、当時は口なしかと思われたが、素の彼は存外お喋りである。ただ何と言えば良いか分からず、また心情の吐露に時間がかかるのだと思われる。
ちなみに現在は叙云学院にてみっちり教育を授けられたため、読み書きも歌をうたうこともお手の物である。お喋りに関しては当時彼を指導していた教師からはやかましいと一喝されるほどに。そんなわけで、九重綺沙良が学院に所属していたのは15年と平均より長めである。
花屋で働いているだけあって花や植物に関して人並み以上の知識が備わっている様子。なお自宅に花を植えたりなどはしていない。自宅は花! 草! 咲き乱れし花園! というよりも、緑豊かな庵のようなところに一人で住んでいる。ザ・純和風家。
小さな特技はプレゼントのラッピング、ひよこの雌雄識別。お祭りの屋台に連れて行けばウィンウィン。
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