プロローグ4 ページ4
立香「道満…。居たんだ…。」
道満「これは失礼。マスターが図書館に入っていく姿をお見かけしたもので、つい…。」
紫式部「要するに尾行したのですね。」
道満「ンンンン！尾行だなどと人聞きの悪い…拙僧はただマスターの身を案じていただけにございまする。」
立香「はいはい、ありがとね。で、道満。その猫又って妖怪について、何か知ってるの？」
道満「はい。拙僧の知識の範囲内であればお教えしましょう。
猫又とは、主に山奥に棲む妖とされておりまするが、猫又の多くは主に家屋で人間に飼われていた猫が本来の寿命よりも長生きすることで変貌した妖とされています。」
立香「へぇ…悪い妖怪なの？」
道満「いえいえ、猫又の中には確かにいささか狂暴な個体も居るとされていますが、人間に飼われていた猫であれば、その人間に尽くし、寄り添い、恩返しを果たすとされております。」
立香「へぇ…。」
紫式部「確か、普通の猫であれば開けた襖は開けたままで済ます所を、猫又ならしっかり襖を閉めていくと聞いたことがあります。」
道満「ンンン！さすがは紫式部殿、よくご存知で。」
立香「ありがと、道満。」
立香は妖について記された本を何冊か本棚から取り出すと、それらを両手で支えるように持って、読書用テーブルに向かう。
道満「おや？まだ猫又について疑問がおありで？であれば、拙僧にお聞きくだされ。さぁ、さぁ。」
立香「もう十分聞かせてもらった。だから、今度は自分で学ぶことにするよ。紫式部がせっかく本棚まで案内してくれたしね。」
紫式部「！マスター…。」
道満「ンンン…左様ですか…マスターは勉強熱心であらせられる。」
《蘆屋道満は藤丸立香の懐柔にまたもや失敗し、内心、やきもきするのであった。》
紫式部(まったく、油断も隙もありませんね、このお人は相も変わらず。)
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作者名：タンポポ | 作成日時：2022年9月28日 13時
