第四節王の名は1 ページ38
炎に帰った後、立香は即、眠りについた。
その時、夢を見た。
ヨミの穴とは対照的の白い空間。
何もない殺風景の景色が広がる中、立香はぼーっと立っていた。
立香「……ここは…どこ…?」
辺りを見回したその時。
?「人類最後のマスターにしては、随分とお粗末な人間だな。」
立香「!」
声がした方へ振り返ると、そこには…
橙色の生地に花柄の着物を着た長髪の少年が立っていた。
立香「君は…誰?」
?「この僕にそんな口のきき方をするのかい?」
立香「!…初めまして。私は藤丸立香と申します。」
?「へぇ…そこそこの礼儀は弁えているのか。
そういえば、お前が契約した英霊とやらの中には本物の王も何人か居るんだっけ。
難儀だな。ただの人間に王が頭(こうべ)を垂れるか。それはそれで滑稽だがね。」
立香「…頭なんてはなっから垂れてないよ、あの方達は。」
?「そうなのかい?」
立香「…私はあなたの言う通り、ただの人間で、特にこれといった特別な力を持っている訳じゃない。
こんな私に国を治めた王達が頭を垂れると本気で思う?」
?「お前にはその右手の令呪とやらがあるじゃないか。」
立香「あのね、これ、三回しか使えないの。
それに王とひとくくりにしたって、色んな人が居るんだよ。」
?「例えば?」
立香「…厳格な秩序をもって国を治めた王も居れば、国に混沌を招いた王も居る。
私には国を治める力はないから、王達の気持ちはわからない。
だけど、たくさんの人を正しい方へ導いたり、率いるのが簡単なことじゃないのはわかる。
だから、自分の国のために戦い、守り抜いて死んだ王も、人から罵られ、非難されながらも逃げなかった王も、私は心から尊敬している。
そんな王達の頭を私ごときに垂れさせる訳にはいかないでしょ。」
?「数多の英霊を服従させてるマスターの言葉とは思えないな。」
立香「確かに私はマスターだけど、王達に限らず、サーヴァントの皆との間に服従なんてない。
…どうあっても私は…人間だから、サーヴァントの皆より弱い。
…そんなただの人間の私にできることは…生きることだ。」
?「……。」
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作者名:タンポポ | 作成日時:2022年9月28日 13時