*First Step* -今度こそ踏み出すために-

~第65歩。~ ページ35

〜sideA

ギルドホールを飛び出したは良いものの。

「……あれ、どうしよう」

そもそもソウジロウ君と何の連絡も取っていないことを思い出した。


何やってんだ、わたし。


心の内でため息をついてから、さてどうしようかと考え始める。

ギルドハウスにいるだろうか。

でもいきなり押し掛けたら迷惑かもしれないし……。

じゃあ、念話でアポを取ってから行く？

……ね、ねねね念話するの!!?

勇気が出ない、ちょっと保留。

でも、他に方法があるだろうか。

突撃するのも迷惑だと考えると、やっぱり念話での連絡は避けては通れない。

……念話、してみようかな。

どきんどきん、うるさく心臓が早鐘を鳴らし始める。

緊張やら不安やらでいつもの倍の時間はかかった気がするけれど、やっとの思いで何とかメニュー画面を呼び出した。

フレンドリストから、彼の名前を選択して。

念話を、かけ……。

いざ、やろうというときになって、手が止まる。


＿＿嫌われていたら、どうしよう。

＿＿断られたら、嫌がられたら。


そんな思考に陥ったとき、ふっとセララちゃんの声が甦る。

『大事なのは、相手をどこまで信じられるか』
『もうちょっと、わがままになっていいんじゃないかな』

……そうだよ。

嫌われる、だなんて考えちゃいけない。
というか、あのソウジロウ君が簡単に人を嫌いになるなんて思えない。

ましてや、嫌がるだなんて。

断られる、という可能性は大いにあるけれど。

そんなの、当たり前だ。怖がっていては、前になんか進めない。


＿＿よし。

もう一度、念話をつなぐべく手をあげた……


そのとき、だった。

急に画面が差し変わる。

同時に念話のコール音が頭に響き始める。

「……っ!!」

震える指先で、念話を開始するボタンを押せば。

『＿＿あ、もしもし、Aさんっ！』

聞き慣れた、聞きたかった、彼の声が、鼓膜を震わせた。



『今から、会えませんか？』

~第66歩。~→←~描いて頂きました~

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