姫の目覚めは午前0時 15 ページ38
Aは少し躊躇うように、けれど俺の気持ちを尊重するように、保冷剤を下ろしながら言った。
「『私』がツナを好きなのは…ツナの隣が1番自分らしくいれると思うから」
少し伏せられた瞼に長い睫毛。俺をかつて射抜いたその青い瞳は、今はここにはいない沢田だけを見ている。
「ツナは…花村Aが『王子』でも『王』でも『私』でも…きっと何度傷つけ合うことがあっても…同じように隣に置いてくれたと思うから。」
保冷剤を親指で揉みほぐし、言ってるうちに恥ずかしくなったのかAは少し顔を赤くさせながら自分の足元を見下ろす。
その自分には決して向けられない熱が、部屋の涼しさと相対的で、胸を穿つ。
ベル「…あっそ」
悔しい、と思ったのは
沢田が好かれてる姿を再確認したからではなく…Aの言ってることが正しかったから。
きっと俺はお前が最初から『姫』なら、お前を認められなかった。
絶対どんなAでも好きになるなんて言えなかった。
なのに、沢田のアホがどんなお前でも助けて手を差し伸べて仲良くなっていく姿は容易に想像できて…自分の中でAが惚れる理由に納得ができちまった。
「…でも1番の理由は、ツナが私を好きにならないと思ってたからかも。」
ベル「あ？沢田が？」
どう見たってお前にベタ惚れしてるのに、何を言ってんだ？
「…ツナは別の人が好きで、私との関係が変わることはこの先なくて、私はずっとツナの隣にいれることに安心してたんです。
でも、そうじゃないって…ツナの隣に別の誰かが並ぶのかもしれないって気づいたときに…苦しくなった。
きっと、それが本当の始まり」
穏やかな顔をしてそう告げたその顔には、愛おしい人の姿を思い浮かべた微笑み。
ベル(…なんだよ…結局それって、
沢田が1番"嘘をつくのが上手かった"ってことじゃねーかよ)
恋や性別の変化に怯えるAのそばで、沢田は恋心を悟らせず親友としてAの隣にいた。
その安心感が逆に…Aの心を引き寄せた。
ベル(あいつ、とんだ食わせもんだな)
誰よりも得難い心を得るのに必要だったのは、嘘と言う名の誠実さで…
沢田はそれを持っていた。
誰よりもAの気持ちを考えていた。
自分の気持ちを押し付けない。
そんな当たり前なことが重要だったと知ったって
もうこいつにめちゃくちゃな告白をしてしまった王子にはどうしようもないんだっての。
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千景 - とても面白いです！更新頑張ってください！ (2018年8月15日 13時) (
レス) id: b982409f44 (このIDを非表示/違反報告)
ルナ(プロフ) - 殿堂入りおめでとうございます！ (2018年6月7日 1時) (レス) id: 9b1390adf3 (このIDを非表示/違反報告)
らっく(プロフ) - ギャグにするの忘れてた（白目） (2018年4月28日 22時) (レス) id: b617ebd231 (このIDを非表示/違反報告)
らっく(プロフ) - 明日から5月中旬まで忙しいので更新はゆっくり目です (2018年4月22日 19時) (レス) id: b617ebd231 (このIDを非表示/違反報告)
らっく(プロフ) - しらすさん» 白蘭と近くなったけど、ツナとすごく遠ざかったわけではないと言う感じですね。ツナの隣が落ち着くことには変わりないけれど、それが『特別』ではないと言った感じです。ここからどうなるか気になりますね〜！ (2018年4月22日 19時) (レス) id: b617ebd231 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：・
| 作成日時：2018年4月22日 14時
