85話 ページ6
自分に抱き着く少女が1人。言わずもがな、翔奏である。
必然的に場所は翔奏の家というわけで。
きーちゃん、と馴染み深い呼び方でいつものような笑顔を見せる。
しかしその服装はいつもと全く違う。
「翔奏どういうことだ」
赤い服を、天竺の特服の上着を羽織っていた。
「今日も世界中の人間が蟻に見えるくらいイケてる！大好き！きーちゃん以外ゴミ！」
「翔奏ァ？笑顔と賛美と侮蔑でやり過ごすつもりかおい」
「痛いっ！？きーちゃん頭グリグリしないで！怪我人なのにその力はどこから出てくるの！」
安静！と徐々に治り始めている傷口を軽く叩かれた。痛い。
しかし安静というのは紛れもない事実。ここはお言葉に甘えて特注のベッドに寝転がることにした。
ふかふか過ぎて落ち着かない。
「何で……」
「きーちゃんいる所に私あり！黒川君にも断る理由ないって言われたし、きーちゃん1人にするとすぐ怪我するし、きーちゃんと離れたくないし、私を差し置いてきーちゃんが黒川君と一緒にいるのなんて許し難いし、きーちゃんと離れたくないし」
黒川君にはきーちゃんにベタベタするなって言われたけど、そんなこと言われた記憶なんて消えたから好き勝手する！
そう言った翔奏は自分に巻かれた包帯を取り替え始めた。
取り敢えずお前がイザナとバッチバチなのと私情だだ漏れなのはよく分かった。
何？お前ら自分の知らないところで交流してたの？
「私の役割はサポート。きーちゃんの為にいっぱい働くよ」
「きーちゃんの為じゃなく一応天竺の為に働いてください」
……こういう時の翔奏は絶対引かない。
関わらせたくなかった。全ては自分の不徳の致すところ。
それに、多分理由ってあれだけじゃない。長年の感がそう言っている。
「自分は優しいからこれ以上深くは聞かない」
「優しいってアメリカンジョーク？」
「ふざけんないつだって自分は良心の塊だわ」
よっこいしょ、と体を起こして翔奏と向き合う。
「翔奏」
「なぁにきーちゃん」
「アジトに行く時は自分と離れないこと。危ないことは絶対しないこと。何かあったら自分に言うこと」
約束できるか？と翔奏に問う。
「絶対、なんてないんだよきーちゃん」
思わず黙ってしまった。
「でも、うん！きーちゃんとの約束！守る！！」
「……お前のことは絶対守る」
「ん！きーちゃんかっこいいねぇ。んふふー大好きー！」
翔奏はそう言って満面の笑みで自分を抱きしめる。
不安は、拭えなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 502人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「東京リベンジャーズ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雨野夜都 | 作成日時：2021年11月28日 17時
