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83話 ページ4

無理矢理こぎつけた退院の日。

痛む体を無視して趣のある我が家に帰るとそこには人影が1つ。

「…………?」

「おっせぇ。待ちくたびれた」

からり、と特徴的なピアスが鳴った。

空風で揺れる柔い白髪が網膜に焼き付く。

「何で……」

「すっげぇアホ面」

そう言って鼻で笑う男、名を黒川イザナという。

昔いた孤児院で一緒に育った、翔奏に次いで自分にとって大事な人間。

此奴の為になら死ねるくらいには大事な人。

少年院から出た後もちょくちょく連絡は取っていたし、会ってもいた。

でもまさか家に来るとは。どんな風の吹き回しだ。

「何でイザナ……家…………あぇ……?」

「引き払う」

「は?」

「此処、引き払う。オレん所来い。これ命令な」

「荷物はどう……っちょ、は……」

突然のことに頭が追い付かない。

「引き払うのは大晦日。その怪我だからオレが手伝いに来てやるよ」

自分が困惑している間にも話がどんどんと進んでいく。

大晦日って……全然時間ねぇじゃん。流石に急じゃありませんかお兄さん。

大家さんに何て説明をすれば…………。

「イザナどういう──」

「あとお前年明けから天竺の一員な」

「は?」

「天竺な」

天竺な、と思わずロボットのようにオウム返し。

「オレのチームで拠点は横浜。メンバーは……まぁ近いうちに紹介する。お前のポンコツ脳みそで覚えられるかは知らねぇけど」

「いや、あのイザナ……情報処理が追い付かない。イザナ待って整理する時間が欲しい。イザナ、イザナあの……」

「イザナイザナうるせぇ聞こえてんだよ。下僕なら大人しく“わん”って言っとけ」

分かったか、と据わった目で見つめられる。

「…………わん」

こんな具合で自分は今イザナと一緒にいるのである。

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作者名:雨野夜都 | 作成日時:2021年11月28日 17時

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