番外編1 ページ45
新宿の一角に存在する寂れた廃ビル。
柵なんてないに等しい屋上で1人眼下の景色を眺める。
時刻は夜中の1時。本日の黒脛は夜遊びしたい気分でお送りしております。
え？学校はどうするんだ、だって？
…………なんのこと？(すっとぼけ)
「ばはっ！ンな所で何してんだァ？」
「ん、あ……？」
振り向けば来客が1人。
見えたのは罪と罰の文字。
漂ってくる苦くて甘い香り。
会うのは廃れたゲーセン以来だろうか。10cmくらいは分けて欲しい程に背がデカい。
あの時とは違い髪は無造作に下ろされていた。
名前は確か半間修二。流石に覚えた。
「半間君こんばんは。飼い主は一緒じゃないのかい」
「24時間毎度毎度一緒にいるわけじゃねぇよ」
「いい子ちゃんはおねむの時間か」
「割と言うよなお前」
稀咲がいい子ちゃんは笑うわ、と半間君。
ちりちりと体に刻まれた丸い跡が痛んだ。
ゆらゆらと長い肢体を揺らしながら此方に近付く半間君。
やがては隣に立って同じように景色を眺め始める。
「半間君も何しに来たの」
「此処オレの管轄だって知ってっか？歌舞伎町の死神っつーんだけど」
「仰々しい異名だね。物騒な君に合ってる」
「つまりは知らねぇってことか」
「知らねぇ」
知らないというより、十中八九忘れてる。多分1回は翔奏に教えてもらっているはずだ。記憶にないだけで。
「お前は何してんだ？」
「適当にふらついてた。そしたら此処見つけて、景色眺めてる」
きらりきらりと輝く人工の光。
ときたま聞こえる喧騒は、普段だったら彼が一撃でのしてしまうのだろう。
その時、ぶわりと甘くて苦い香りが顔いっぱいに広がった。
「……半間君煙たい」
「煙たくしてんだよ」
退屈を語る琥珀色の瞳に映る自分。
そんな自分もまた、退屈そうな顔をしていた。
「お前なかなかイカれてるよなァ。普通根性焼きされたらビビるもんだろ」
「痛いのは慣れっこだよ」
「天性のドマゾだな」
「誰も痛いのが好きとは言ってねぇ」
早合点が過ぎるぜ半間君。それに自分はMでもSでもなくNです。ノーマルのN。
「灰皿」
「はい」
そう言って手のひらを差し出した。
おっと条件反射。
「やっぱマゾじゃねぇか」
「煩い静かに」
でもまぁ出されたもんは使うべきだよな、とわざとらしく言った半間君は容赦なく手のひらにタバコを押し付ける。
「あっち」
じゅくりと痛みが体を駆けていった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 311人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「東京リベンジャーズ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雨野夜都 | 作成日時：2021年8月24日 5時
