3話 ページ4
「あ、来た!私ずーっと待ってたんだよ!!たい焼き買ってこれた!?」
「お望み通りあの時間帯に残ってるたい焼き買い占めてきたよ」
「さぁっすが!3に9でさんきゅー!」
2人と分かれ、やってきたのは通い慣れた大きなマンション。
超ハイテンションで自分を出迎えるのは幼馴染みの翔奏。
このハイテンションがデフォの天才少女。男っぽい名前だがれっきとした女の子である。
実家は超が3つ付いても足りない程の金持ち。実家を継ぐのは翔奏のお姉さんなので彼女はやりたい放題だ。
その証拠に彼女は実家に住んでおらずマンションの最上階で一人暮らし中。
「きーちゃん膝の上乗せてー」
バカみたいにデカいソファーなのに座るのは何故か膝の上。
これはよくあることなので気にしない。
「制服からたい焼きの匂いする!」
「食べるならさっさと食べろ。安物だけど紅茶も買ってきたから」
「流石!私が今飲みたい物を当てるなんて、これはもう運命共同体の域だよ!」
嬉しそうに笑ってたい焼きを頬張る翔奏。
頬に付いた餡子を指で拭って口に運べば更に嬉しそうに笑う。
「ところで、きーちゃん。さっき東京卍會の総長と副総長と連絡先交換してたよね?何で?」
……此奴また見てたな。
「東京卍會?何だそれ。確かに金髪の奴らとは会ったけれど」
「知らないの?東京卍會は渋谷を仕切ってる暴走族だよ!総長が佐野万次郎で副総長が龍宮寺堅。あとはあとは──」
すらすらとえげつない量の情報を話し出した翔奏。
しかし言われたところで記憶できる量なんて凄く限られてくる。何せ自分の脳みそはポンコツなので。
「──って聞いてる?きーちゃん」
「聞いてる。東京都内のマンホールの数だろ?」
「全然違う!後で資料を冊子にして郵送するね!」
「3年前に送られてきた冊子も読み終わってないからページ数減らせよ」
「表紙どうしよっかなぁ……」
此方の意見を聞かないのもよくあることだ。流石に慣れた。
手持ち無沙汰となりポケットにしまってある携帯を弄る。
7月も中旬に差し掛かった。今でも暑いのに更に暑くなるなんて正直ウザったい。
はぁ、と溜息をつくと翔奏が顔を覗き込んできた。
「きーちゃんどーしたの?」
「何でもないよ」
正面に鎮座する大きすぎるテレビの真っ暗な画面に映る自分。
相変わらずの自分に嫌気がさすと同時に不快感が襲う。
体を駆け巡るドス黒い何かから逃げるため、翔奏の肩口に顔を埋めたのだった。
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作者名:雨野夜都 | 作成日時:2021年8月24日 5時