27話 ページ28
「花垣武道」
口に含むように固有名詞を呟く。
いけないいけない。翔奏を話題に出されると短気になる癖をどうにかしないと。
やり過ぎたかなー……今度会ったら謝ることも視野に入れないと。
でも本当に彼は何で翔奏のことを知っていたんだろうか?
腕に抱き着く翔奏を見つめながら夜道を歩いて思案する。
「情報送ろうか?」
「いや、別に……いらない」
「何でぇー!?いつもなら頂戴って言うじゃん!!」
お姉さん煩い。近所迷惑だからもう少し静かにしなさい。
「あの子は何か、苦手だから。ちょっと自分とは対極すぎる」
光が強過ぎて黒脛は溶けちまうよ。どう頑張ってもあれは善人だ。というか見れば見る度善人にしか見えない。
絶対自分はあの領域には行けない。
行きたいとも、思わないけれど。
「情報送ってもいい?」
「翔奏さん聞いてます?いりません」
「んぐっ!!」
「ダメージ負わないで面倒」
「きーちゃん辛辣!!辛辣が過ぎるよ!辛辣が服着て歩いてるぅ!!」
だからうるせぇ。
「……そんなにミチミチ君が嫌?」
「嫌だ。ついでに言えばお前が姉貴さんの匂い染み付けてんのも嫌だ。もっと言えばお前が姉貴さんの匂い付けたまま自分といるのも嫌だ」
珍しく自分の声に感情がこもる。振り切れたマイナスの感情ではあるが。
にっくき姿を即座に己が拳で殴って殴って殴る。当然脳内で。
現実でやったら自分の首が飛ぶ。文字通り、首が飛ぶ。
お前の元に生首飛来しちゃうぞっつって。
「機嫌悪い原因の殆ど姉貴じゃん!!きーちゃん姉貴の何が嫌いなの?」
「存在そのもの」
「存在」
「あの人お前と自分以外人間に見てないじゃん。あと、出会い頭に襲ってくるのやめて欲しい。下僕呼ばわりするのもやめて欲しい。暴言吐くのも人の物勝手に取るのも我儘なのも動くのも喋るのも呼吸するのも何もかもやめて欲しい」
「要は存在するのをやめて欲しいんじゃん!回りくどいよきーちゃん!一応私の姉貴だよ!!」
「そんなこと知らない。自分はまだお前と姉貴さんの血が繋がってることも認めてない」
認めない。きーちゃんは認めないぞあんな女……っ!!
「そんなどうすることもできないところから!!DNAまで否定するのきーちゃん!?」
「あとさ」
「うん?急な話題転換に驚きを隠せないよ」
ミチミチ君って何?某アイス製品みたいなあだ名で呼ぶなよ。彼にはタケミっちっていう某ゲームみたいな素晴らしいあだ名があるのに。
「今更!!」
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作者名:雨野夜都 | 作成日時:2021年8月24日 5時