16話 ページ17
汚したくなる程に真っ白な空間。
生暖かい光が差す建物には老若男女様々な人が入り浸る。
あっちには車椅子の男性、こっちには白衣の天使に手を引かれる女児。
つまるところ病院。
とは言ってもお世話になっているのは自分ではない。
「思ったよりも元気そうだったなドラケン」
「そうだね」
「無理矢理引っ張って来たことまだ怒ってんのか?悪かったって」
「何で分かんだよ気持ち悪いな」
「不満が顔全面に出てんだよ」
そう、現在病院でお世話になっているのは自分ではなくドラケン君だ。
自分は見舞いの帰りである。
なお自分の意思ではない。隆に無理矢理連れて来られた。
ドラケン君が自分を不審に思っていることなんて分かっている。だから行かないと心に誓った。
それなのに隆ときたらご自慢の子猫ちゃんで迎えに来て見舞いに付き合わせた。
隆はそういうのに疎い。お前は自分といるにはちょっと人格者過ぎる。
まぁ、これは100歩譲って許せる。
しかし、だ。
駄菓子菓子──いや違う間違えた。だがしかし。
不満なことが1つ。
「初対面の人に殴られた時って反応しずらくない?」
「あれは……擁護できねぇな。今度オレから言っとくから許してやってくれ」
申し訳なさそうに眉を落とす隆を凝視したまま、熱をもった腫れた頬を撫でる。
後から見舞いに来た黒髪の人に思いっきり殴られたのだ。
突然、初対面の人間に、顔面を、握り拳で、思いっきり。
ドラケン君も、黒髪君の連れの金髪君も、隆も、全員驚いていた。
自分を殴った黒髪君は、此方を殺さんばかりの眼光で睨めつけていた。
殴られた理由は分かる。理解も納得もしている。
多分、ドラケン君に危害を加えるとでも思われたんだろう。
仲間の病室に死んだ人間の目した不穏な奴がいたら殴りたくもなるわな。
大切だもんね命って。自分なら勢い余って殺すよ。
だから怒ってはいない。不満なだけ。
しかしなかなかにいい殴りだった。あれは空手かボクシングをやっている殴りだ。
確か名前は、えーっと…………あぁそうだ。
「荼毘」
「場地。縁起悪い間違え方すんな。何より此処病院だぞ」
間発入れずに訂正が入った。
「韻踏んでるからセーフだろ」
「そんな独自ルール知らねぇよ!」
ちなみに近くを通った看護師さんから滅茶苦茶睨まれた。わざとじゃないですお姉さん。
「三ツ谷君!」
「お?」
看護師さんからの睨みに耐えていた時、隆を呼ぶ声が背後から聞こえてきた。
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作者名:雨野夜都 | 作成日時:2021年8月24日 5時