ヘアカット(祈り)5 ページ49
さくらは昴の顔をジッと見つめた。
キールの撮影した映像で、赤井が頭を撃たれた
直後の事を思い出す。
彼の顔にはたくさんの血が飛び散っていた。
さくらは思わずぎゅっと目を閉じ、下を向いた。
「あなたが傷だらけになるのを見たくないから…。」
苦し気に表情を歪ませたさくらは、昴の手を
ぎゅっと握る。そんなさくらの手に、昴の
大きな手が重なる。
「大丈夫ですよ。傷の一つや二つ。
それこそ生きていればすぐに治ります。
でも…あなたが悲しむなら、もうしませんよ。」
昴はさくらと目を合わせ微笑んだ。
二人の視線は外へと向けられた。
真っ青な空がどこまでも続く。
遠く都心のビルも見えた。
『どうか…このままずっと
《りおと》《秀一さんと》一緒にいられますように。』
繋いだ手に力がこもる。
今日も明日もその次も…
危険と隣り合わせの二人には、今この瞬間の
保証すらない。
それでも。
昴もさくらも、そう祈らずにはいられなかった。
大切な人を失う悲しみ。
もう二度と味わいたくはないから…。
祈りをささげる二人を乗せたゴンドラは、
静かに地上へと戻っていった。
「さてと…ランチの時間ですね。
さくら、何食べたいですか?」
「う〜〜ん。久しぶりにラーメン食べたい。」
「あ、良いですね。そのジャンキーな感じ。」
「じゃあ決まり〜。ラーメン屋さん行こ!」
先ほどとは打って変わって、楽し気に
ランチの相談をした二人は手を繋いで歩き出す。
フッとさくらは観覧車の方を振り返った。
先ほど手向けたユリの花が風に揺れている。
『キュラソー。また来るね。
今度は子どもたちも連れてくるわ。』
そう心の中で呟くと、笑顔でパークを後にした。
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元ある話に妄想を加えるのは
なかなか面白かったです。
もう少し捻りたかったのですが…
文章力も創造力も乏しい私には…。
またチャレンジしてみたいです。
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作者名:aki | 作成日時:2020年1月22日 13時