番外編：ペリドットとアンバー短編集3【名探偵コナン】【赤井秀一】【安室透】 (ページ41)

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ケンカ３ページ41

　「そうよ。あのタイミングで、もしその車が
ジンだったら…。《左利き・拳銃》そして
《正確なショット》。誰を連想すると思う？」
「！！」
「そ、それで…危険を承知で車道に飛び
出したの？」
「うん。そうだよ。」
「じゃあ、赤井さんにさっきそういえば
良かったのに…。」
何故その事を言わなかったのか、コナンは
不思議でならない。

　「彼にあの時言ったって、きっと同じだった
と思うわ。私が危険なことをするって事に
怒っているんだから。ましてや、それが
自分のせいでって…思って欲しくなかったの。」
さくらは下を向き、組んでいた自身の手を
強く握りしめた。

　「彼が私を守ってくれるように、私だって
彼を守りたいの…。」
さくらは下を向いたまま呟いた。涙がぽたっと
膝に落ちた。
『そ、そうか…。偽装とはいえ、さくらさんは
赤井さんがキールに撃たれるところを見て
いる。』
それでずいぶん苦しんだのも昔の事ではない。

　「ごめんね。あなたに涙を見せるつもりは
無かったのに…。」
慌てて目元を拭った。
「今日はもう工藤邸には戻らない。
私達…少し距離を置いた方が良いわ。」
さくらの寂し気な言葉を聞いて、コナンも
下を向いた。

　夜9時。
りおは入浴を済ませ、ミネラルウォーターの
栓を開けながらPCの画面を見つめていた。
書きかけの報告書を仕上げようとPCを立ち上げ
たものの、そんな気分には一向になれない。
ため息ばかりが何度も漏れた。

コンコン

その時、玄関ドアをノックする音が聞こえた。
『こんな時間に誰だろう。しかもチャイムを
鳴らさずにノックするなんて…』
不審に思い、警戒しながらドアに近づく。

コンコン

再びノックされた。
「はい。どちら様ですか？」
ドアに向かって声をかけた。

　「俺だ。」
「ッ！」
「しゅ、秀一さん？！」
赤井の声が聞こえて、りおは驚いた。
思わずドアを開けようとしたが、グッと
堪えた。

　「き、今日は…帰って。少し距離を置いた
方が良い。頭を冷やすから。」
ドア越しに話しかけた。
「すまん。今、沖矢の姿じゃないんだ。」
「ええッ！？」
慌ててドアを開けた。

　軽装で帽子をかぶり、夜なのにサングラスを
している。
「と、とにかく入って！」
そう言って中へと赤井を招き入れた。
「お邪魔します」
と言って靴を脱ぎ、赤井が小上がりを上がった
ところで背を向け、居間の方へ歩き出す。
赤井が居間に足を踏み入れたことを確認して
立ち止まった。