ケンカ1 ページ39
「りおッ! いい加減にしろッ!」
「なんで? 私悪いことをしただなんて
思ってない。」
「良い悪いじゃないんだ。なぜそれが
分からない?!」
「ちょ、ちょっとふたりとも!
やめようよ…」
珍しく…というか、たぶん初めてなのでは
ないだろうか。この二人が言い争うケンカと
いうのは。
次第にヒートアップする言葉の応戦に、
コナンはヒヤヒヤしていた。
事の発端は1時間程前に起きた、
小さな事件だった。
金曜日の夕方。昴とさくらは大学で待ち
合わせ、一緒にスーパーへと来ていた。
買い物を終え、スーパーを出ようとした時、
偶然出入口でコナンと鉢合わせした。
どうやら彼は蘭にお遣いを頼まれたらしい。
二言三言言葉を交わし、それじゃあと手を
上げた時、スーパーから引ったくり犯が
飛び出し、さくらとぶつかった。
体勢を崩しながらも慌てていた犯人は、
そのまま赤信号を無視して通りへと
飛び出した。
そこへ運悪く、スピードを超過した若者の
車が突っ込んできたのだ。
昴がとっさに懐の銃へと手を伸ばしたが、
それよりも一瞬早くさくらが通りへ飛び出し、
間一髪…犯人とさくらは車と接触することなく
反対側の歩道へと転がったのだった。
「結果的に大きなケガもしなかったし、
犯人も捕まった。事故も起きなかった。
万事うまく行ったのに。なんでそんなに
怒っているの? 意味が分からないわ。」
さくらはムッとした表情で視線を移す。
さくらの視線の先には、帰宅後怒りを隠す
こともせず、荒っぽく変装を解いた赤井が
いた。イライラしているのか、コナンがいると
いうのに《りお》呼びだ。
「結果だけ良ければいいってもんじゃ
ないんだ。
たまたま運が良かっただけだろう。
犯人のガタイもさほど大きくなかったから、
りおの力と飛び出した時の勢いで反対側の
歩道まで行けたが…。もう少し体の大きい
奴だったら、対向車線で別の車にはねられて
いたんだぞ!」
「相手の体格も計算に入っていたわ。」
「あの短時間にか?」
「当然よ。」
お互い一歩も引かない。
「あの時俺は銃を持っていたんだ。
事故を起こさないように車を止めることは
いくらでも出来た。」
赤井の表情もドンドン険しくなっていく。
「へぇ…。街中で拳銃を発砲する気だったの?
銃刀法違反で逮捕するわよ。」
「りおッ!」
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作者名:aki | 作成日時:2020年1月22日 13時