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雨のち笑顔5 ページ30

***

ザーーーーー
雨は変わらず強く降っていた。
ハッと我に返る。
「ヒロ先輩と、そんな話をしたことがあったな…。」
懐かしさと、そして無性に悲しさがこみ上げた。
雨に濡れた顔には、ひとすじふたすじと涙が流れる。

 もうあの頃には戻れない。
ヒロ先輩はいない。
納得しているはずなのに。
なんで…こんなに悲しいのだろう。
溢れた涙を止めることが出来なかった。


 「泣いているのですか?」
ふいに傘を傾けられ、声をかけられた。
「ッ!!」
振り返ると傘を差しだした昴が、悲しそうな
顔でこちらを見ている。
「す、昴さん! どうして…しかも傘…」
今日は予想外の雨だったはずだ。
工藤邸からも離れている。
昴がここに居る事も、傘を持っている事も
不思議だった。

 「ジェームズに用があって。帰る時に雨が
降っていたので彼の傘を借りたんですよ。」
そう言いながら、昴はジャケットのポケット
からハンカチを出した。
それでそっとりおの顔を拭く。

 「あなたはびしょ濡れですね。こんな所で
何をしていたのですか?」
「昔を…思い出していたの。
どんな警察官になりたいか…そう話していた
頃の事を…」
「そうですか…」
それ以上昴は尋ねてこなかった。

 「このままでは風邪を引きますよ。
早く帰りましょうか。ここからならあなたの
アパートの方が近い。お邪魔しても良いですか?」
「ええ。コーヒーご馳走します。」
そう返事をして微笑んだ。

 二人で一つの傘に入り手を繋いだ。
濡れて冷えたりおの手を、昴は優しく握る。
昴の体温を感じて、りおは自分の心が穏やかに
なるのを感じた。

 『あれ? そういえば、ジェームズに用が
あったって言ってたけど…彼が滞在している
ホテルってここから反対方向じゃ…』
しかし見ると、傘は間違いなくジェームズの
物だった。
そう気づいた時、察した。
『突然の雨だったから…心配して…。
わざわざ遠回りして、雨で足止めされている
かもしれない私を送るつもりだったんだ…。』
昴の心遣いに、思わず繋いだ手をぎゅっと握った。

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設定タグ:迷探偵コナン , 赤井秀一 , 安室透   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:aki | 作成日時:2020年1月22日 13時

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