雨のち笑顔1 ページ26
時系列:3章前くらい
久々の「雨シリーズ」です。
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「あ〜…雨降ってる…」
買い物をして店を出ると、外は雨が降っていた。
今朝の天気予報では雨の予報は出ていなかった。
りおは傘を持っていなかったので、仕方なく
雨が止むのを待つことにした。
想定外の雨で行きかう人も傘を持っておらず
慌てて店に入る人影がチラホラ見えた。
「はぁ…」
思わずため息がこぼれた。雨の日は未だに
苦手だ。ザーザーという雨音が、寂しさと
悲しみを思い出させる。
りおは水たまりにいくつも描かれる丸い
波紋を眺めながら、雨が止むのを今か今かと
待っていた。
15分程待ってみたが、雨は止むどころか
ますます激しくなってきていた。
スマホで天気を確認するが、どうやらしばらく
この雨は続くらしい。
「仕方がない…濡れて帰るしかなさそうね…」
りおは覚悟を決めて店を出た。
激しい雨は、りおの髪をあっという間に
濡らし、顔も服もずぶ濡れだ。
アスファルトの歩道も、側溝に流れきれなかった
雨水が川のように流れている。そんな中を
りおは一人歩き続けていた。
雨のせいでりお以外歩く人影はなく、まるで
たった一人置いてけぼりにされたみたいだ。
「はぁ…」
再び重いため息をついて、家路を急いだ。
公園の前に差し掛かったところで、ふと
ベンチに目が行く。雨に濡れ寂しく佇む
それを見て、思わず足を止めた。
今日のように寂しく、泣きたい気持ちを
堪えて一人ベンチに座っていた……
昔の事を思い出した。
***
「広瀬…どうしたんだよ。こんな所に一人で」
警察学校のグラウンド隅で、ベンチに座っていた
りおに声をかけてきたのは諸伏景光だった。
「ヒロ先輩…」
つい2週間ほど前から話をするようになった
先輩に名を呼ばれ、りおは顔を上げた。
彼の落とし物を拾って声をかけ、そのお礼に
とジュースをおごってもらったのが
きっかけだった。
「今日の訓練、珍しく失敗続きだった
って聞いたぞ。」
「えっ? 誰から聞いたんですか?」
驚いてりおは尋ねた。
「え…そ、それは…」
景光は焦った。
ホントは聞いたわけじゃない。
授業中教場の窓から、グラウンドでの訓練を
ずっと見ていた。いつもは難なくこなすりおが、
今日は精細さを欠いていた。
「も、黙秘だ。黙秘権を行使する。」
「え〜。先輩ひどい。」
りおは口を尖らせた。
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作者名:aki | 作成日時:2020年1月22日 13時