思い出の…３ ページ23
金曜日
工藤邸に帰ってきたりおはご機嫌だった。
「昴さん！ たっだいま〜！」
「お帰りなさい、りお。ずいぶんご機嫌ですね。」
「え？ そう？ いつも通りだよ。」
「そうですか？」
いつもより数倍ニコニコしているし、
声のトーンも若干高い。
『何か良い事でもあったのか？』
昴は小首を傾げた。
玄関でいつも通りハグをすると、
りおは鼻歌交じりにさっさとキッチンへと
行ってしまう。
旅行から帰ってきて最初の金曜。
しかも今週はりおがアパートに戻ったため、
久しぶりに別々に過ごした一週間だった。
『もう少し触れ合いたかったが…』
ほんの少し拗ねながら、昴も遅れてキッチンへと入った。
「今日は昴さんのビーフシチューですね！
美味しそう！ じゃあ私はサラダ作りますね。」
すでに手を洗ってエプロンをかけていたりおは
そのまま冷蔵庫を覗いた。
レタス、ブロッコリー、トマトを手にする。
昴はそんなりおの背後に近づき、後ろから抱きしめた。
「ッ！ ちょっと昴さん！ 野菜が落ちちゃう。」
「りお…今日はいったいどうしたのです？
いつもと違う…。いつもはもっと甘えてくるのに…」
「えっ？！ そ、そう？」
とぼけるように視線を泳がす。
「ちゃんと話してくれないなら、こちらにも
考えがありますよ。」
昴はりおの手から野菜を奪うと、
それらをキッチンカウンターの上へ置く。
そのままりおをお姫様抱っこした。
「えっ！ ちょっ、待って昴さん！」
「りおが素直になる方法はいくらでも
ありますから。例えば…ベッドの上…とかね。」
ニヤリと悪い顔を向けた。
「ええっ！ わ、分かった。分かりました。
話しますっ！」
りおは顔を赤くして降参した。
「おや、もう白状してしまいますか。残念。」
昴はしてやったり顔だ。
「じゃ、じゃあちゃんと話すから、
昴さんも一つ約束してくれる？」
「約束？ 良いですよ。」
りおをそっと下ろしながら即答した。
「私の話を聞いても絶対盛り上がらないでね。」
『盛り上がる？』昴の頭に？が浮かぶ。
「分かりました。」
何の事を言っているのかイマイチ
分からなかったが、冷静でいれば良いだけの
事だと、たかをくくった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 50人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：aki | 作成日時：2020年1月22日 13時
