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藤枝との対峙4 ページ4

 藤枝はさくらの視線が殺気や威嚇ではなく、何か強い意志と悲しみを持っていることに気づく。
アンバーの瞳に吸い込まれそうになる感覚にハッとした。
さくらは数歩藤枝に近づく。そこでようやく口を開いた。


「ギムレットレポートを見つけた時、私たちの目をかいくぐって国外に持ち出すのは不可能よ。
組織を裏切った時点であなたは殺されるわ」
「ふん。そんなもの、メールに添付して送ればものの数秒だ」
「ギムレットがそう簡単に添付出来るようにしているはずがない」
「俺の手にかかればそんなもの造作もない。何年この世界で生きていると思ってるんだ。
データさえあいつらに届けば、俺の命なんてお前らにくれてやる」

藤枝がそう吐き捨てるように言った瞬間———

 「違う!!あなた間違っているわ!!」
さくらは叫び、藤枝の両腕を掴んだ。
「それで彼女が助かってあなたが死んだら、彼女は幸せになれるとでも思っているの?
置いていかれる悲しみを、あなたは何も分かっていない!!」
藤枝の腕を握るさくらの手に力が入る。
自然と涙がこぼれた。藤枝は驚いたように目を見開き、さくらを見た。

 「お前…エミリーを知っているのか?」
「…一昨日会ってきた」
「ッ! エミリーは? 今、エミリーの容態は?」
先ほどまでの殺気だった藤枝ではなく、恋人を心配するひとりの男になっていた。
「意識はなく、やせ細っていたわ」
「くっ!」
藤枝の顔が苦し気に歪んだ。

 「彼女一人が助かる方法じゃなく、二人で生きる方法を選択して」
さくらはせり上がる悲しみに耐えながら、藤枝にそう伝えた。
「悪いようにはしないから…」
それを聞いて、藤枝の表情が変わる。
「データを送らなければ、アイツの命が危ない。何か方法はあるのか?」
藤枝からの問いかけに、さくらはグッと奥歯を噛みしめた。
しばらく沈黙した後、静かに話し始める。

 「エンジェルダストを作り出したのはこちらの組織。
開発に携わった者もラボにはいるわ。
少なくとも、あちらで出来ることはこちらの組織でも出来るってことよ」
「……分かった。お前を信用しよう」

 その様子を黙って見ていたバーボンはジンに連絡する。
「彼をラボに送ってください」



 程なくしてウォッカが迎えに来た。
藤枝が部屋を出る前、バーボンとラスティーを見る。
ほんの少し表情を緩め、微笑んだように見えた。
そしてそのまま部屋を出て行った。

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設定タグ:名探偵コナン , 赤井秀一 , 安室透   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:aki | 作成日時:2019年11月18日 13時

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