空を見上げて風を感じて3 ページ20
「ふっ…くッ!…」
昴は涙をガマンすることができなかった。
「さくら、すまなかった…俺が悪かった…」
さくらは口元の酸素マスクを外すと、点滴の繋がったもう一方の手も昴に伸ばす。
「あなたを抱きしめても…良い?」
昴の首に両腕を回した。
「泣かないで…私を心配してくれたんでしょう?
あなたは悪くない。私がいけなかったの…」
回した両腕に少し力を入れ、昴を抱きしめる。
「ごめんな…さい」
「なんで…なんでお前が謝っているんだ?」
「なんでって…え? じゃ、じゃあ、ごめんなさいって言ってごめんなさい?」
「……お前には敵わないよ…」
昴は首に回したさくらの手を掴み、そっと緩めると体を起こしてさくらを見た。
涙がいくすじもこぼれた。
こんな風に泣いたのはどれくらいぶりだろう。
しかしその表情は穏やかだった。
そんな昴の手をさくらはギュッと握る。
「昴さんの手…温かい。お願い。手を握っていて…」
重いまぶたを懸命に開けて、さくらは感触を確かめるように昴の手を何度も握った。
「もう少し…眠って…良い?」
もう目を開けている事もしんどくなって、目を閉じたままさくらは問いかける。
昴はその手を包み込む様に握り返した。
「ええ。良いですよ。ずっとそばにいます」
昴の言葉を聞いてさくらはわずかに微笑むと、すぅーっと眠りに落ちた。
「これじゃあ、彼のためだけに目を覚ましたようなものね」
哀が二人の様子をみていてつぶやいた。
「自分がどんなに辛い状況でもああやって人のために…。
今だって体、相当キツかったはずよ。
昴さんを気遣ってあんなに喋っていたけど…」
「それがさくらくんなんじゃよ。だから皆彼女に惹かれるんじゃ。そうじゃろ?」
博士は哀の顔をみてニッと笑う。
哀も笑顔を見せ、「そうね」とつぶやいた。
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作者名:aki | 作成日時:2019年11月18日 13時