新たなる決意 ページ9
(マジかよ......)
信じ難い事実に、俺はなんとも言えない複雑な表情のまま視線を床に下ろす。
もちろん前世にて鬼滅の刃はブームになるほどの大人気だったし、俺たち兄妹も漏れなく鬼滅の刃が大好きだった。
竈門兄妹やかまぼこ隊はもちろん、それぞれが抱く想いの強さには毎回読む度感動していたし、なんなら単行本だって前の世界じゃ全巻ちゃんと揃えている。
努力して、鬼に立ち向かって、懸命に日々を生きて。
実際そんな彼らを俺は心から尊敬していたし、今まさにその世界に自分がいるのだから、本来もっと喜ぶべきなんだろう。
だが......、
(本物の、人を喰う鬼......)
俺には到底、そんないい感情は生まれそうになかった。
こんな言い方は良くないかもしれないが、あの世界はあくまで漫画であって非日常なんだ。
そこにいざ自分が、それも無力な子供で存在してるとなると状況は全く違う。
力のない事が怖く、だがそれ以上に何一つ役に立ちそうにない自分が腹立たしくて仕方ない。
(それに......)
二度目の家族とはいえ、三人は俺の大切な肉親だ。
守りきって死ぬならまだしも、弱いままみすみす鬼に喰わせるだなんて事、俺は死んでもしたくない。
幸い知識なら誰よりもあるんだ。
幼いからって言い訳にして、ぐずぐずしてたら後で絶対後悔する。
(......やるしかない)
冨岡義勇だって言っていた。
生殺与奪の件を他人に握らせるなって。
いくら鬼殺隊が鬼を退治してくれると言ったって、今が一体いつの頃で、柱が何人いるのかも分からないんだ。
頼りきるなんて無理がありすぎる。
それに今は家族を、ハルを守れる力さえあればそれでいい。
それがいつか、誰かを助ける力にもなり得るんだから。
深呼吸をして、改めて気持ちを落ち着ける。
(とはいえ、長い道のりになりそうだ......)
きっと色々しんどいだろうな。怪我や傷だってこれから増えるだろうし。
まぁそれこそ言ったって仕方がないけども。
運や勘があるだけまだマシな方だ。
家族の為にも死ぬ気で守りきろう。
俺は手のひらをぐっと握ると、離れ離れとなった妹の事を思い浮かべる。
きっとこれがあいつなら、今頃「お兄ちゃんばっかずるい!」とか、「私が全員守る!!」とか言ってはしゃいでたに違いない。
(兄ちゃん全力で頑張るからさ)
適当に見守っててくれ。
俺もお前の分まで、全力でこの世界を生き抜くから。
そんな想いを込め、俺は固く決意をすると、寝ているハルの所へ戻り目を閉じた。
394人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みかん - もう公開はしないのでしょうか…凄く見たい…また公開にするような機会があることを願ってます!非公開にした理由が深いのなら作者様はこのコメント無視して頑張ってください!! (2022年1月9日 12時) (レス) id: bc2584c695 (このIDを非表示/違反報告)
まめ(プロフ) - 素晴らしいの一言に尽きます...素敵な作品で楽しく読ませていただきました。最新頑張ってください。陰ながら応援してます...(´∀`) (2020年10月18日 22時) (レス) id: 000b312b5b (このIDを非表示/違反報告)
三日月 - まだ(# ゚Д゚) (2020年3月10日 17時) (レス) id: 4d4917b86c (このIDを非表示/違反報告)
三日月 - 続きまだ? (2020年2月29日 20時) (レス) id: 4d4917b86c (このIDを非表示/違反報告)
佐藤悠真(プロフ) - 微笑ましいに尽きますね。いつもホワホワしながら読まさせていただいております。更新頑張ってください。楽しみに待ってます。 (2020年2月18日 0時) (レス) id: 44efc3fddb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Syu | 作成日時:2020年1月16日 21時