公開羞恥 ページ32
何の気なしに口から出た言葉は、家族想いの少年にはかなり効果的だったようで。
「....あの、炭治郎さん?」
「......」
どうしたのかと名前を呼ぶも、一向に返事は返ってこない。
それどころか俺と目を合わせる事もせず、何とも言えない表情のまま固まっていて。
(えっ、と......)
これは要するにあれだ、つまり、その。
「......直しに行こうか?鍋」
控えめに尋ねたら、それまで動かなかった炭治郎の首がコクリと縦に動いた。
****
お互い掴んでいた手を解いて、生産性のない言い争いにも終止符を打って。
「じゃあ、えっと......家行ってもいいすか」
「あぁ......ぜひ頼む」
何とも絶妙な空気に気まずさを感じながら、元迷子の子に別れを告げるべく彼女の家へと戻る俺達。
会話も無くひたすら砂を踏む足音だけが響いていて、まぁ簡単に言うと何これ気まずさで死にそう。
俺が炭治郎なら今絶対話しかけないで欲しいし。俺は気の利く男だし。
「おや、ケンカは終わったのかい?」
「「......」」
だから顔みて早々に地雷を踏むのはやめて貰えませんかねお母様!?
現れて即回収とかこっちもびっくりだわ!
「いやまぁ、はい......」
「そうかい、そりゃよかったよ。あんた達の声家まで響いてたからねぇ」
「...ご迷惑おかけシマシタ......」
何これさっき以上に気まずくてしんどいんだが。
てか家まで響いてたってマジ?
俺達のくだらない闘いが家族のお茶の間に筒抜け?なにそれ泣いた。
恥ずかしさと気まずさで顔面がキュッともスンッともなるわ。
「......」
あとお願いだから炭治郎さんは黙ってないでこの人を躱すの手伝って。
震える程恥ずかしいのは分かるけど今は頑張れよ!
頼むからこの状況で俺を一人にするな!!
「いいのいいの仲直りしたんなら!もう焦れったくてあたしゃ何度そっちに行こうと思ったか......」
「あはは......」
一回くらい撫でさせてやりゃあいいのになんてため息混じりに言われ、モロに聞かれてた恥ずかしさで流石の俺も乾いた笑いしか出てこない。
それどころか炭治郎に「お兄ちゃんを困らせるもんじゃないよ」と注意までし始めて、どうやらこの人は俺の方が年上だと思い込んでるらしい。
「......はい」
俯いて肯定するしかない彼に、俺はこの後なんて声をかけるべきなんだろうか。
とりあえずライフはほぼゼロである事に違いないだろう。
(哀れ炭治郎......)
あんまり可哀想だから、後でまたお菓子をあげようと思う。
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みかん - もう公開はしないのでしょうか…凄く見たい…また公開にするような機会があることを願ってます!非公開にした理由が深いのなら作者様はこのコメント無視して頑張ってください!! (2022年1月9日 12時) (レス) id: bc2584c695 (このIDを非表示/違反報告)
まめ(プロフ) - 素晴らしいの一言に尽きます...素敵な作品で楽しく読ませていただきました。最新頑張ってください。陰ながら応援してます...(´∀`) (2020年10月18日 22時) (レス) id: 000b312b5b (このIDを非表示/違反報告)
三日月 - まだ(# ゚Д゚) (2020年3月10日 17時) (レス) id: 4d4917b86c (このIDを非表示/違反報告)
三日月 - 続きまだ? (2020年2月29日 20時) (レス) id: 4d4917b86c (このIDを非表示/違反報告)
佐藤悠真(プロフ) - 微笑ましいに尽きますね。いつもホワホワしながら読まさせていただいております。更新頑張ってください。楽しみに待ってます。 (2020年2月18日 0時) (レス) id: 44efc3fddb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Syu | 作成日時:2020年1月16日 21時