31 ページ31
.
『な、んでそんな遠くに行くの？』
今、自分は普通に返せていただろうか？動揺したせいで、挙動不審じゃないだろうか。
だって、海外に行くとは聞いてたけど、そんな遠くに行くとは思っていなかったから。
「……尊敬してる人がいるんだ。その人のところでバレーやりたいなって。ずっと考えてたんだ、いつかそっちに行くこと」
『そうなんだ……。
それにしても急だね、卒業したらすぐなんて』
「なるべく早い方がいいと思ってさ」
及川の顔を見て思う。
ああ、もう全部全部決めたんだなってこと。
自分の人生をちゃんと自分の意思で選択する。
当たり前のようで、これが存外難しいことを私は最近になってようやく知った。
『じゃあ、卒業したらすぐお別れか……』
「…………そうだね」
『及川が自分で決めたことだもんね。応援してるよ』
「うん、ありがとう」
『だからちゃんと頑張ってよね、もし及川がオリンピックとか出るようになったら、今度は絶対応援に行くからさ！』
私は今出せる精一杯の明るさでそう言った。言いようもない悲しさと寂しさで、心の中が伽藍堂になったような心地がした。
卒業したらみんなバラバラになることなんてわかりきっていて、当たり前のことなのに。
やっぱり、すぐに会えない距離にまで離れてしまうのは、こんなにも辛いものがあるんだな。
きっとこの寂しさもそう。この一年、なんだかんだ及川とはいつも一緒にいたし、だから今こんなに苦しいんだよ。
___________違う。
そんな"みんなのうちのひとり"じゃない、及川は。
私にとってこの人は________、
「じゃあもし、」
「もし俺が本当にオリンピックに出られたら、」
.
.
「俺と結婚してよ、Aちゃん」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 36人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
蜜柑(プロフ) - 卵おにぎりさん» ありがとうございます！最近更新できてなかったので頑張ります…！ (2021年8月3日 14時) (
レス) id: 6c0400a92a (このIDを非表示/違反報告)
卵おにぎり - とても好き! (2021年8月3日 11時) (レス) id: 9fc3fd6c87 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蜜柑 | 作成日時：2021年5月30日 19時
