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夏季休暇に入ってすぐ、地元の割と大きなお祭りがある。
昼までにある程度課題を終わらせて、リビングでぼんやりしていた。
今日だよなー、何着ていこうかな。
少し楽しみにしている自分がいて。
及川が迎えに来るのは16時。まだあと4時間もあるなぁ。何もしないでいるのは流石に退屈だ。
とはいえ家のこととかそれなりに動き回っているうに、あっという間に時間は迫っていて。
何故か予定より一時間も早くに、チャイムが鳴った。
宅配便かな、なんて思って玄関を開けると、及川だった。
『え、ちょ、っと早くない???』
「ご、ごめん。Aちゃんに会いたくてつい………。迷惑だよね、俺外で待ってるね」
ダメもとで来たってことか……。
はあ、外で待たれるとか余計に気になるんだけど。てかこんな猛暑の中そんなことさせられるわけないでしょ?
『いいから、うち入って待ってて』
「………いいの?」
『外で待たれて倒れられても困るから』
「そ、そっか」
そんなわけで、何故か我が家に及川がいるという状況が出来上がる。
及川は手持ち無沙汰に突っ立って、再びもじもじしだした。何なのよこの人は。
そんな恥ずかしそうにするなら早く来なけりゃいいのに。そう言いかけたけど、やめた。
『麦茶しかないけど』
「いやいや、お構いなく……!」
『あ、アイスもあるよ。ハーゲンバニラとカシューナッツ、塩キャラメル………どれにする?』
「そんな、気を遣わないでいいって!」
『いらないの?』
「…………じ、じゃあ遠慮なく頂きます」
カシューナッツ味を選んだ及川は、心做しかちょっと嬉しそうに見えた。
ハーゲン、好きなのかな。
………………嫌いな人も珍しいか。
「てかさー、」
『うん?』
「Aちゃんて実はお金持ち?」
『え、なんで』
「いや、なんとなく?お家めっちゃ広いし、すっごい綺麗だし。お手伝いさんとかいたりするのかな?って」
『いやいや、そんなんあるわけないじゃん。家の中は大体私が掃除してるんだよ』
「え、この広いおうち全部!?」
そんなに驚くこと?
及川の反応が大きすぎる。
『そんなに大変じゃないよ。あんま物ないし』
「確かに、ミニマリストってかんじ…………」
『及川の部屋は散らかってそうだね』
「……………」
『図星?』
「…………ノーコメントで」
漫画や雑誌で散らかった部屋が想像できて、少しだけ見てみたくなった。
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蜜柑(プロフ) - 卵おにぎりさん» ありがとうございます!最近更新できてなかったので頑張ります…! (2021年8月3日 14時) (レス) id: 6c0400a92a (このIDを非表示/違反報告)
卵おにぎり - とても好き! (2021年8月3日 11時) (レス) id: 9fc3fd6c87 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蜜柑 | 作成日時:2021年5月30日 19時