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走り出した時向い風が吹いた。木々がお前には無理だって僕の事を嘲笑った。でも僕は止まらない。初めて正面切って人に銃口を向けた。
動く人と言うのはとても当て辛くてどうにか左腕に当たったけどすぐにマガジンは空になる、勿論敵に気付かれ一人の敵がこっちに銃口を向けた。でもそれも想定の内。トントン達から離れる様に逃げる。右に曲がって左に曲がる。
唸りを上げる銃声に耳をつん裂く銃弾が通り過ぎる音。そしてピッと頰が切れるでも気にしない。気付けば星さえ消えている暗闇の森をポンコツの足を罵りながら駆ける。
多分もう少し…これぐらいゾムと比べたら全然遅いよ。だから動け!前に出ろここで僕がどうにかしないと‼
でもその願いは届かず右足に銃弾が当たる。嘆声を上げてつんのめり倒れ込む。
でも幸か不幸か銃弾はガッツリ中心に当たる訳じゃなくて側面をえぐる様に当たっていた。急いで左手で傷口を押さえて右手でコートのポケットに入れていたハンドガンを急いで取り出す。
でも敵も残弾数が少ないのかさっきの様に乱射はせずジッと僕を見ていた。
向かい合う二人、動かない引き金。観客は老獪に笑っている木々。そしてフクロウが一声鳴くのを皮切りに森に銃声が響く。
空薬莢がカランと落ちる音が同時に聞こえ僕の腕はダラリと垂れ、敵は背中から倒れて紅い花を咲かした。
『か…勝った?そうだ、早くトントンの方に行こう…』
脱臼した腕や足の怪我は後回しにし、木を支えにして伝う様に足を引きずって歩く。でも不思議と痛みは感じなくて、ただ視界が白く霞んで半回転する。
僕は前に進めているのか、それともそこに止まっているのかそれすら分からない。ただトントン達を助けないと、と言う感情に駆られて彼等の元を目指す。
空を見上げるとさっきまで雲で隠れていた星は再び黒曜石に散りばめられたダイヤモンドの様に輝いていた。
あはは…僕もうダメかも…でも行かないと、トントン達の所に行かないと…
そう思っているのにとうとう足は言う事を聞かなくなって膝から崩れ落ちてうつ伏せに倒れる。
視界に映るのは地面と木だけ。彼等の影などどこにもない。
『最後にみんなに会いたかったな…結局五年後のあの場所…には戻れないんだ…でもみんなを助け…られたのなら…良いのかな…?』
微睡む意識にブラックアウトする視界、頰の傷から血が伝い涙の様になる。
闇の中に沈んでいく中、聞き覚えのある声が僕の
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月歩 - ラーシュさん» ありがとうございます!あのシーンは特にお気に入りでしたのでそう言って貰えると作者冥利につきます! (2020年3月31日 11時) (レス) id: 55b2340671 (このIDを非表示/違反報告)
ラーシュ - 完結おめでとうございます!夢主君がemさんやrbrに止められているのに振りきって仲間を助けにいって重症を負うところで凄いハラハラさせられてしまいました!凄く面白い作品でした!! (2020年3月31日 11時) (レス) id: 3d2f41f960 (このIDを非表示/違反報告)
月歩 - 白狐さんさん» ありがとうございます!個人的にはもう少し書き込みたかったのですが、楽しんで貰えて嬉しいです! (2020年3月31日 8時) (レス) id: 55b2340671 (このIDを非表示/違反報告)
白狐さん(プロフ) - 完結おめでとうございます!!もう、最っ高でした。5年前にトリップするっていう発想も勿論ですが、内容がギッシリ詰まってて読み応えのある楽しい作品でした!! (2020年3月31日 8時) (レス) id: c1b876fff4 (このIDを非表示/違反報告)
月歩 - ふゆさん» ありがとうございます!主人公のキャラはかなり手探り状態でしたけどそう言って貰えて嬉しいです! (2020年3月24日 14時) (レス) id: 55b2340671 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月歩 | 作成日時:2020年3月12日 0時