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5.忠実な犬 ページ6

過去の世界に来た。
もちろんリュヌも連れて。

だが、到着したときに隣にリュヌの姿はなかった。うっかり落としてしまったようだ。

彼女のことだ。この世界でも適当に生きていけるだろう。

しかし、まさか過去に遡った結果、ギムレーとしての力をほとんど失うとは思わなかった。

まぁ……この世界での“器”がギムレーとなったときに、僕が取り込めばいいだけの話だが。

僕がこの状態なのだから、彼女を側に置き用心棒にした方がいいかもしれない。

彼女の魔導の才能は、人間にしては素晴らしいと評せるものがある。

万が一クロムたちの味方に付かれては、僕はともかく、屍兵たちでは手に余るだろう。

回収しに行くか。

僕は、彼女がいるかもしれない道筋を辿る。

「待てえええぇぇぇ!!!」

ある森の中、そこから聞き覚えのある叫び声が聞こえて来た。

リュヌだ。

僕はそう確信し、森の中に入る。

何故僕がこんなにも早く彼女を見つけられたのかは分からないが、気にする必要はない。

それにしても、相変わらず品のカケラもない声を出す女だ。

森の中で、彼女は野生の熊を追いかけていた。

彼女の手に持っているのは、僕が前に彼女に持たせた魔道書【トロン】だった。

その魔道書は威力がある分、範囲が狭い。

大抵の魔法使いならば、魔法を敵に当てれるのは当たり前だが、リュヌは違った。

馬鹿力ならぬ馬鹿魔力をもっているものの、命中率は最悪だ。

前に命中率が上がらないなら食い殺すと脅したが、それはなかなか効果的なようだ。

「そのまま僕に忠実な犬になってくれればいいんだけどね」

友達とは、何て忠実で素晴らしいものだろう。

『いついかなる時も、友の背中は友が守る』

そんなことを考えていると、過去に来る前にリュヌが言った言葉が頭を過る。

彼女は僕にとって、忠実な犬だ。

だがそのときの彼女の目は、犬にしては温かく真っ直ぐだった。

「やったああぁぁぁ!!!」

突如聞こえた彼女の声。

どうやら、魔法が獲物に当たったらしい。

魔道書を抱きしめ嬉しそうにはしゃぐ彼女を見て、僕の頬は自然に緩んだ。

______________________________________

本当は、友達をやめるという脅しが効いているのですが、食い殺すという方の脅しが効いていると勘違いするギムレー様でした。

6.友の頼み→←4.絶望の先で待つキミへ



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005(プロフ) - とても感動しました!すごくシリアスな展開からのハッピーエンド素敵でした! (2018年4月21日 21時) (レス) id: 1fcd95cf50 (このIDを非表示/違反報告)
やまたこ - 面白かったです100点! (2018年4月16日 7時) (レス) id: 4e05d1b0ac (このIDを非表示/違反報告)
リムス(プロフ) - 書き人知らずさん» こちらこそ、コメントをくださりありがとうございました。この物語を読んでくださり、ありがとうございます。 (2018年3月23日 12時) (レス) id: 27e40c194f (このIDを非表示/違反報告)
書き人知らず(プロフ) - 感動する物語をありがとうございました。 (2018年3月23日 11時) (レス) id: bdbb5f59e7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:リムス x他1人 | 作成日時:2018年3月1日 22時

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