最終話 邪竜の半身 ページ48
邪竜ギムレーを倒した英雄たちは、それぞれの故郷に帰った。
新たな旅立ちをする者、歴史から姿を消した者などさまざまであったが、彼らが英雄であることに変わりはない。
邪竜の半身、リュヌ。
彼女もまた、英雄として歴史に名を刻まれた。だが、それ以降の彼女の記録は何も残っていない。戦死したとも、旅に出たとも言われているが、有力な情報は一切ない。
彼女の埋葬を頼まれたという者の話によると、彼女の亡骸は、青い炎に包まれ消えてしまったと話す。
彼女の遺体を誰が持ってきたのかと、彼女の仲間たちは問いただす。
ある双子が持ってきた。
それ以外は何も知らないと話した。
戦は終わり、邪竜ギムレーの脅威は去った。
人々は歌い、踊る中で、聖王の軍師は複雑そうに空を眺めたという。
またある場所では、その光景を不快そうに見つめる者がいた。
「我が滅びたというのか虫けら共が」
「世間で見ればそうなるよ。あと、あまり虫けらって言わない方が良いんじゃないかい?」
こんな会話がなされていたが、それを聞いたものはいない。
双子の1人はため息をつき、イーリス聖王国のある民家に入る。
そこは、その双子が住む家なのだと言う。
兄ギムレーは、最初は人との関わりを嫌っていたが、今では1部の人から強い信頼を寄せられている。弟ルフレは、兄とは違い多くの人から好かれている。
これは、ある1人の少女が望んだことなのかもしれない。
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イーリス聖王国から少し離れたある草原で、1人の少女が横たわっていた。
そんな少女を見つけたのは、白い髪に赤い目をした青年。
「おい、起きろ」
慣れたように、青年は少女の頬を叩く。
少女は一瞬険しい表情を見せると、ゆっくりと目を覚ました。
その様子に、青年はクスクスと笑う。
「僕の下僕にしてあげようか?」
青年はそう言いながら、起きたばかりの少女に手を差し伸べる。
その手を見て、少女は驚いたように目を見開いて、優しく微笑み青年の手を掴んだ。
「下僕は嫌だ。友達になろうよ」
そう言った彼女に、青年は口元を緩め、彼女の腕を引いてそっと抱き寄せた。
「おかえり、友よ」
そんな2人の青年と少女を、青い空から降り注ぐ陽の光が照らし、草花の香りを乗せた風が優しく包み込んだ。
かつて世界を破滅と絶望に染めた邪竜と、その半身である“人間”の少女の物語の幕が閉じた。
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005(プロフ) - とても感動しました!すごくシリアスな展開からのハッピーエンド素敵でした! (2018年4月21日 21時) (レス) id: 1fcd95cf50 (このIDを非表示/違反報告)
やまたこ - 面白かったです100点! (2018年4月16日 7時) (レス) id: 4e05d1b0ac (このIDを非表示/違反報告)
リムス(プロフ) - 書き人知らずさん» こちらこそ、コメントをくださりありがとうございました。この物語を読んでくださり、ありがとうございます。 (2018年3月23日 12時) (レス) id: 27e40c194f (このIDを非表示/違反報告)
書き人知らず(プロフ) - 感動する物語をありがとうございました。 (2018年3月23日 11時) (レス) id: bdbb5f59e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リムス x他1人 | 作成日時:2018年3月1日 22時