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外伝 願い ページ49

ギムレー様が復活した。その生け贄として、私は選ばれた。

『光栄に思いなさい』

そう、両親を殺した人たちから言われた。
友達もいない、家族もいない私は、この世に何も残っていない。

もう……死んでもいい。
そう思った。けれど、屍兵に囲まれた途端に、死の恐怖を感じた。声にもならない悲鳴を上げて、屍兵を倒して行く。

そのときに、私はキミに出会った。

色々あったけど、私はキミが大好きだった。
信教者たちの話とは違い、キミはとても人間らしいから。

『キミの望みは何だい?聞かせてごらん』

2年前、キミが私に聞いてきた質問の答えは、キミにあげた指輪にある。

【生きて】

でも本当は、違う。
キミが私の側に駆け寄ってくれたとき、心の底から、言いたかった。

死にたくない、キミと一緒に生きたい。
1人ぼっちは、もう嫌だ。

でも、そんなことを言えば、キミはどうする?
キミはきっと、何としてでも私を生かそうとするでしょう?

だから、言えなかった。

ねぇ、ギムレー。
私の本当の願いは、キミと一緒に生きること。

キミといると、世界が違って見えたんだ。
どんなに暗くて、狭くても……キミがいるだけで、世界が明るくて、とても広かった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

イーリス聖王国のある民家で、私は友人たちとシチューを作っていた。

「……相変わらず毒々しいな」

「み、見た目より味の方が大事だから……」

率直に感想を言うギムレーと、なんとかフォローしようとしてくれる未来のルフレさん。

いいんです。私の料理は酷いんです……。

私がこの世界に戻ったとき、ギムレーとルフレさんが、双子として生活しているのに驚いた。

私の腕の呪いは消え、寿命は元どおり。その代わり、もう左腕は使えない。

「じゃあ、僕はまた買い出しに行ってくるよ」

悲惨なことになったシチューを見ながら、ルフレさんは家を出て行く。

「ねぇ、ギムレー」

2人だけになった家の中で、私は不思議そうに首を傾げるギムレーに言った。

「生まれてきてくれて、ありがとう」

私が言えば、ギムレーは驚いたように目を見開いて、フードを深く被った。

照れた様子のギムレーに、私が声を上げて笑うと、ギムレーは私の頬をビヨーンと引っ張る。

「いでででで……」

涙目になった私を見て、ギムレーは楽しそうにクスリと笑った。

そのときに、ギムレーが何か言ったのだが、私はきちんと聞き取れなかった。

『生きてくれて、ありがとう』

あとがき→←最終話 邪竜の半身



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005(プロフ) - とても感動しました!すごくシリアスな展開からのハッピーエンド素敵でした! (2018年4月21日 21時) (レス) id: 1fcd95cf50 (このIDを非表示/違反報告)
やまたこ - 面白かったです100点! (2018年4月16日 7時) (レス) id: 4e05d1b0ac (このIDを非表示/違反報告)
リムス(プロフ) - 書き人知らずさん» こちらこそ、コメントをくださりありがとうございました。この物語を読んでくださり、ありがとうございます。 (2018年3月23日 12時) (レス) id: 27e40c194f (このIDを非表示/違反報告)
書き人知らず(プロフ) - 感動する物語をありがとうございました。 (2018年3月23日 11時) (レス) id: bdbb5f59e7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:リムス x他1人 | 作成日時:2018年3月1日 22時

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