14.支援会話A ルフレ&リュム 後半 ページ16
「あ!すみません」
私は慌てて身を引こうとしたが、ルフレさんは私をそっと両手で抱き寄せる。
「……泣いてもいいんだよ」
「え……?」
今まで以上に優しい声で、ルフレさんは言う。
「君が何を抱えているのかは知らないけど、ここには、何かを背負って戦っている仲間が大勢いるんだ。1人で抱えないで」
こちらから、ルフレさんの顔は見えない。
けれど、抱きしめる腕の力が強くなっているのは分かる。
「君も、僕らの仲間なんだ。一緒に旅をする戦友で、僕の弟子だ」
何を言っているのか、分からない。
でも、この言葉1つ1つが、とても温かく感じた。
「君は……もう1人じゃない」
だから、この瞬間に知った。
私は今まで、何に怯えていたのかを。
怖かったのだ。
仲間がいる。そう認めることが、今まで孤独だった私には、未知の恐怖しかなかった。
だから私は、友人でさえも距離を置こうとしてしまっていた。
寂しい、という感情を、忘れそうな自分がいたから。
「……師匠」
「ん?」
私は抱きしめられたまま、ルフレさんに話しかける。
「私の友人は、世間からは悪者と言われています。きっと、師匠たちの敵になる。でも、私は師匠たちより、友人の隣に立つのを選ぶと思います。だから……」
師匠たちの敵になる。
そう言えばいいだけなのに、言えない弱虫な自分がいる。
せっかく、仲間だと言ってくれる人たちがいるのに、それを崩そうとする自分がいる。
それでも私は……。
「リュム」
私が話し出すのに詰まっていると、ルフレさんが私の名を呼ぶ。
「君は僕と初めて会った時、僕を魔導書で殴って気絶させたの、覚えてるかな?」
あれ……覚えていらしたんですか……。
「その節は本当に、すみませんでした……」
いや、本当に申し訳ありませんでした……。
「……うん、いいよ」
ルフレさんは小さく笑い、私の頭をクシャクシャと撫でる。
『……うん、いいよ』
それは、私の裏切りにも向けて言った言葉なんだと、気が付いた。
その日初めて、私は声を上げて泣いた。
ねぇ、ギムレー。
私は今、幸せだよ。
キミと出会って、師匠と出会って、仲間と出会って……。
キミが私を見つけてくれたから、私は未来の世界で、孤独の中で死なずに済んだ。
次は、私がキミを救う番だ。
その後のことは、あまり覚えていない。
でも、いつしか夜空を照らしていた無限の星々が、今までで1番輝いているように見えた。
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005(プロフ) - とても感動しました!すごくシリアスな展開からのハッピーエンド素敵でした! (2018年4月21日 21時) (レス) id: 1fcd95cf50 (このIDを非表示/違反報告)
やまたこ - 面白かったです100点! (2018年4月16日 7時) (レス) id: 4e05d1b0ac (このIDを非表示/違反報告)
リムス(プロフ) - 書き人知らずさん» こちらこそ、コメントをくださりありがとうございました。この物語を読んでくださり、ありがとうございます。 (2018年3月23日 12時) (レス) id: 27e40c194f (このIDを非表示/違反報告)
書き人知らず(プロフ) - 感動する物語をありがとうございました。 (2018年3月23日 11時) (レス) id: bdbb5f59e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リムス x他1人 | 作成日時:2018年3月1日 22時