検索窓
今日:6 hit、昨日:2 hit、合計:37,660 hit

14.支援会話A ルフレ&リュム 後半 ページ16

「あ!すみません」

私は慌てて身を引こうとしたが、ルフレさんは私をそっと両手で抱き寄せる。

「……泣いてもいいんだよ」

「え……?」

今まで以上に優しい声で、ルフレさんは言う。

「君が何を抱えているのかは知らないけど、ここには、何かを背負って戦っている仲間が大勢いるんだ。1人で抱えないで」

こちらから、ルフレさんの顔は見えない。
けれど、抱きしめる腕の力が強くなっているのは分かる。

「君も、僕らの仲間なんだ。一緒に旅をする戦友で、僕の弟子だ」

何を言っているのか、分からない。
でも、この言葉1つ1つが、とても温かく感じた。

「君は……もう1人じゃない」

だから、この瞬間に知った。
私は今まで、何に怯えていたのかを。

怖かったのだ。

仲間がいる。そう認めることが、今まで孤独だった私には、未知の恐怖しかなかった。

だから私は、友人でさえも距離を置こうとしてしまっていた。

寂しい、という感情を、忘れそうな自分がいたから。

「……師匠」

「ん?」

私は抱きしめられたまま、ルフレさんに話しかける。

「私の友人は、世間からは悪者と言われています。きっと、師匠たちの敵になる。でも、私は師匠たちより、友人の隣に立つのを選ぶと思います。だから……」

師匠たちの敵になる。

そう言えばいいだけなのに、言えない弱虫な自分がいる。

せっかく、仲間だと言ってくれる人たちがいるのに、それを崩そうとする自分がいる。

それでも私は……。

「リュム」

私が話し出すのに詰まっていると、ルフレさんが私の名を呼ぶ。

「君は僕と初めて会った時、僕を魔導書で殴って気絶させたの、覚えてるかな?」

あれ……覚えていらしたんですか……。

「その節は本当に、すみませんでした……」

いや、本当に申し訳ありませんでした……。

「……うん、いいよ」

ルフレさんは小さく笑い、私の頭をクシャクシャと撫でる。

『……うん、いいよ』

それは、私の裏切りにも向けて言った言葉なんだと、気が付いた。

その日初めて、私は声を上げて泣いた。

ねぇ、ギムレー。
私は今、幸せだよ。

キミと出会って、師匠と出会って、仲間と出会って……。

キミが私を見つけてくれたから、私は未来の世界で、孤独の中で死なずに済んだ。

次は、私がキミを救う番だ。


その後のことは、あまり覚えていない。

でも、いつしか夜空を照らしていた無限の星々が、今までで1番輝いているように見えた。

15.邪竜の憂鬱→←14.支援会話A ルフレ&リュム 前半



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (74 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
35人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

005(プロフ) - とても感動しました!すごくシリアスな展開からのハッピーエンド素敵でした! (2018年4月21日 21時) (レス) id: 1fcd95cf50 (このIDを非表示/違反報告)
やまたこ - 面白かったです100点! (2018年4月16日 7時) (レス) id: 4e05d1b0ac (このIDを非表示/違反報告)
リムス(プロフ) - 書き人知らずさん» こちらこそ、コメントをくださりありがとうございました。この物語を読んでくださり、ありがとうございます。 (2018年3月23日 12時) (レス) id: 27e40c194f (このIDを非表示/違反報告)
書き人知らず(プロフ) - 感動する物語をありがとうございました。 (2018年3月23日 11時) (レス) id: bdbb5f59e7 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:リムス x他1人 | 作成日時:2018年3月1日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。