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其の弐 ページ48

Aside

『これ如何いう事?橋部君。』

「バレましたか。」


橋部君が部屋の扉を開けたと同時に私は回転椅子に座ってとある資料を橋部君に突きつける。

橋部君は愛想笑いを浮かべて扉に背を預けたまま口を開く私の言葉を待った。


『……人虎に賞典懸けた人物のリストにこの人が載ってる訳。』

「それに載ってるままですよ。あの方が人虎を欲しくてポートマフィアに捕縛しろと依頼した、それだけです。何を気にしてるんですかAちゃん。」

『……それはあの人がヨコハマに手を出そうとしているという事でしょう。』

「如何だろうね。」


橋部君の言葉が声が何時もより心に刺さる。あの人がヨコハマに手を出したら如何なるのか。周りも自分もただでは済まない。

私の顔色が悪いのを察したのか橋部君はまた言葉を続けた。


「君に迫り来るそれはもう背後に居る。」


ゾワッ、私の背後に迫り来る闇に寒気を感じる。自身の異能で他人の闇を幾つも数え切れない程の闇を抱えて来たと云うのに、今更闇に怯えるだなんて。

橋部君は一体何がしたいんだろう。私を陥れて楽しいのか。いや、あの人が望む事を橋部君はやっているんだろう。私を闇に陥れて自身の所にまた来いと「矢張りぼくだけでしょう。君と一緒に居られるのは。」背後からあの人の声が聞こえた。


「受け止めて、その現実を事実を。」


彼の紅色の瞳が妖しく光る。不意に現れたあの人の恐怖と今目の前に居るあの人の忠実な鼠。彼の少し濁っている銀髪は本当に鼠を連想させる。


あぁ、迫り来る闇に

______溺れる



「___A」


聞き覚えのある、何処か落ち着く声に現実に戻された。気付けば俯きかけていた顔を上げた。蜜柑色のした癖のある髪と黒い帽子に外套。その姿に思わず少し顔が綻ぶ。

無表情で、だけどほんの少しだけ眉を寄せて心配してるような顔に貴方に今、どれだけ救われたか。


『中也、さん…』

「A、手前仕事終わっただろ___帰るぞ。」


コクリと頷くと中也さんは先に部屋から出て行く。


「橋部、手前は今ポートマフィアに身を置いてる。あんま目立った行動するんじゃねぇぞ。身の程を弁えろ。」

「それはAちゃんにちょっかい出すな、あんまりすると自分の身が如何なるか分からないぞ、と?」

「……そう思うならそうなんじゃねぇの。」

「つくづく双黒揃ってボク達の邪魔をしますねぇ。」

「あァ?」


そんな会話は私の耳には届かなかった。

【鼠の声】→←【避けられない現実と鼠の罠】其の壱



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もちこて(プロフ) - にのさん» 続編は下書き中だったのでパスワード認証にしていました。説明不足でスミマセン!全体公開にしたので読めると思います。お褒めの言葉有難うございます(^^) (2016年12月21日 10時) (レス) id: e2caf94fae (このIDを非表示/違反報告)
にの(プロフ) - 初めまして!!いつも楽しく読ませていただいています。続編のパスワード認証なのですが、パスワードを教えていただけないでしょうか? 続きが気になります!! (2016年12月20日 23時) (レス) id: 46f96eed18 (このIDを非表示/違反報告)
もちこて(プロフ) - ももタ郎。さん» ありがとうございます!私が書く中也さんはいつもこうなってしまう(笑)更新頑張ります(^^) (2016年12月17日 11時) (レス) id: e2caf94fae (このIDを非表示/違反報告)
ももタ郎。(プロフ) - 読みやすくてすごく面白かったです!中也さんがかなり苦労人( ´ ▽ ` )続き楽しみに更新待ってます(`・ω・´)応援してます! (2016年12月17日 8時) (レス) id: 25ccc3b433 (このIDを非表示/違反報告)
もちこて(プロフ) - もこさん» ありがとうございます!面白いと言われると嬉しいです。更新早く出来るよう頑張ります(^^) (2016年12月14日 21時) (レス) id: e2caf94fae (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もちこて | 作成日時:2016年8月8日 13時

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