【避けられない現実と鼠の罠】其の壱 ページ47
太宰が態々ポートマフィアに捕まった理由は中原への嫌がらせもあるが一番は中島敦、人虎に七十億の賞典を懸けた人物の正体を知る為だった。そして太宰は中原に教えられた通信保管所に居た。
「(却説、七十億も支払って虎を贖おうとしたのは、何処の誰かな___?)」
パラパラと記録書の頁をめくりながら探る太宰はお目当ての頁を見つけた瞬間にピタッと動きが止まり、目を見開いた。
「(此奴等は___!?)」
思わず冷や汗が頬を伝う。その時、通信室の扉の鍵が開く音がした。太宰はそれに特に慌てる事は無く、苦笑いをしながら顔だけ扉を開けた本人の方を向く。
「おやおや、部外者が此処に居られたら困るんだけどなぁ。中也君、太宰君を相手にすると本当駄目だね。」
「……ご無沙汰、充君。」
「ご無沙汰、太宰君。」
袴特有の布が擦れる音を出して太宰との距離を縮める橋部はチラッと太宰の持つ記録書を見る。
「態々その情報を知る為ににポートマフィアに捕まったんですか?それなりの傷も付けられてまで。君、痛いのは嫌いな筈では。」
「そうなのだけど、いろんな理由があって来たのだよ?一つは君に会う為だ。」
「へぇ、それは嬉しい。」
大袈裟に驚いてみせる橋部に太宰は何時もの愛想笑いを顔に貼り付けた。そして記録書のとある頁を橋部がしっかり見えるよう記録書の上の方を片手で持ち突きつける。
「この君から見て右の頁の一番右の写真。橋部君、君は此奴の事をよく知っているね?」
橋部はニヤリと笑った。「知ってるとも」橋部は告げる。
「この方がボクの本当の主だからね。」
「今、このタイミングで君達の組織が出るなんて最悪だよ。」
「それもあの方の策ですから。あの方の張り巡らされた罠に君達ははまる他無い。」
太宰は溜息を吐く。橋部の云ってる事は流石に完全には理解出来ない。だが不吉な事が起きるのは確かだった。
「太宰君とあの方は似ていると思いました。だがそれは四年前の話。君はポートマフィアを去ったと同時にどこか変わった。」
「それ、Aちゃんにも云われたよ。どうも君等に云われても素直に喜べないね。」
肩を疎む太宰は記録書を元の棚に戻してから橋部を通り過ぎる。その過ぎる間際、太宰は口角で弧を描いて囁く。
「やってみ給えよ___やれるものなら。
ヨコハマ、この町は簡単に鼠達なんかにやられはしないよ。」
橋部の銀色の髪が自身の小さな笑い声と共に揺れた。
334人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
もちこて(プロフ) - にのさん» 続編は下書き中だったのでパスワード認証にしていました。説明不足でスミマセン!全体公開にしたので読めると思います。お褒めの言葉有難うございます(^^) (2016年12月21日 10時) (レス) id: e2caf94fae (このIDを非表示/違反報告)
にの(プロフ) - 初めまして!!いつも楽しく読ませていただいています。続編のパスワード認証なのですが、パスワードを教えていただけないでしょうか? 続きが気になります!! (2016年12月20日 23時) (レス) id: 46f96eed18 (このIDを非表示/違反報告)
もちこて(プロフ) - ももタ郎。さん» ありがとうございます!私が書く中也さんはいつもこうなってしまう(笑)更新頑張ります(^^) (2016年12月17日 11時) (レス) id: e2caf94fae (このIDを非表示/違反報告)
ももタ郎。(プロフ) - 読みやすくてすごく面白かったです!中也さんがかなり苦労人( ´ ▽ ` )続き楽しみに更新待ってます(`・ω・´)応援してます! (2016年12月17日 8時) (レス) id: 25ccc3b433 (このIDを非表示/違反報告)
もちこて(プロフ) - もこさん» ありがとうございます!面白いと言われると嬉しいです。更新早く出来るよう頑張ります(^^) (2016年12月14日 21時) (レス) id: e2caf94fae (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:もちこて | 作成日時:2016年8月8日 13時