其の拾壱 ページ30
芥川はその異能の刃をAに向けたいのをなんとか我慢し、向き直り苛立ちを隠すように無表情と暗く冷たい瞳で中島を見つめながら口を開く。
「主に狗間の所為で手間がかかったが人虎の捕獲は容易い。」
中島の焦った表情を見て反撃しないと判断したのか芥川は中島に対して警戒の様子は見えなかった。対して中島は今の現状に理解出来ないでいた。
「人虎…?生け捕り…?あんたたち一体___」
「元より僕らの目的は貴様一人なのだ人虎。
そこに転がるお仲間は____いわば貴様の巻き添え。」
「僕のせいで皆が……?」
「然り、それが貴様の業だ人虎。
貴様は″生きているだけで周囲を損なうのだ″
自分でも薄々気がついているのだろう?
______【羅生門】」
芥川の外套が黒獣の姿へと変わる。その黒獣が中島のすぐ横を通り過ぎ、地面が喰われたように削られた。
「僕の【羅生門】は悪食。凡るモノを喰らう。抵抗するならば次は脚だ。」
中島はヘタリと座り込む。自分が周囲を不幸にするのか、不安と絶望が入り混じった中で隣に倒れていた谷崎が掠れた声で「逃げろ」と告げる。ナオミからも微かに呻き声が聞き取れる。中島は国木田の言葉を思い出す。
______社の看板を汚す真似はするな
中島は勇気を振り絞り、必死に叫び芥川に向かって突進する。その必死の猛攻に芥川は呆れた様子と共鳴するように外套がユラリと揺れる。
「玉砕か___詰まらぬ。」
______敦君を侮りすぎだねぇ芥川君は
その小さな呟きと共に中島は芥川の異能の黒獣の下を通り抜け、芥川の背後にあった銃を取る。芥川は中島の俊敏な動きに「ほう」と声を一つ出す。中島は芥川の背後を取り、銃を何発も撃つ。
通常の人間なら此処で倒れるだろう。だが芥川は異能者だ。芥川はぐりんと後ろを向き、その瞳が中島を捉えた。芥川に撃った数発の銃弾はそのまま芥川の目の前で止まり乾いた音を立て地面へ落ちる。
「今の動きは中々良かった。しかし所詮は愚者の蛮勇。」
中島はその通常ではありえない光景に絶句する。芥川は何も知らない無知な子供に教えるように告げていく。
【羅生門】の黒獣は凡るモノを喰らう。それが仮令″空間そのもの″でも。銃弾が飛来し着弾するまでの空間を喰い削った、と。
Aは太宰の言葉を思い出す。「芥川君の異能は応用の仕方によって万能で強力な力を得るだろう」とAは漫画を読む読者のようにただ傍観していた。
334人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
もちこて(プロフ) - にのさん» 続編は下書き中だったのでパスワード認証にしていました。説明不足でスミマセン!全体公開にしたので読めると思います。お褒めの言葉有難うございます(^^) (2016年12月21日 10時) (レス) id: e2caf94fae (このIDを非表示/違反報告)
にの(プロフ) - 初めまして!!いつも楽しく読ませていただいています。続編のパスワード認証なのですが、パスワードを教えていただけないでしょうか? 続きが気になります!! (2016年12月20日 23時) (レス) id: 46f96eed18 (このIDを非表示/違反報告)
もちこて(プロフ) - ももタ郎。さん» ありがとうございます!私が書く中也さんはいつもこうなってしまう(笑)更新頑張ります(^^) (2016年12月17日 11時) (レス) id: e2caf94fae (このIDを非表示/違反報告)
ももタ郎。(プロフ) - 読みやすくてすごく面白かったです!中也さんがかなり苦労人( ´ ▽ ` )続き楽しみに更新待ってます(`・ω・´)応援してます! (2016年12月17日 8時) (レス) id: 25ccc3b433 (このIDを非表示/違反報告)
もちこて(プロフ) - もこさん» ありがとうございます!面白いと言われると嬉しいです。更新早く出来るよう頑張ります(^^) (2016年12月14日 21時) (レス) id: e2caf94fae (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:もちこて | 作成日時:2016年8月8日 13時