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「………太宰さん…？」
「とても魘されていたけれど、大丈夫かい？」
……夢だったのか。過去の出来事がこんなにも鮮明に出てくるなんて。
さっきまで感じていた嫌な感じは全く無くて、
代わりに、私の頭を撫でている太宰さんの手の心地よさを感じていた。
窓の外を見ると、日が暮れていて、
薄暗い空が横浜を包んでいた。
「……ごめんなさい、寝ちゃってた…」
「否、机に伏せて寝ていたから、私がソファへ移動させたんだ。其処じゃあキツイだろうと思ってね」
周りを見渡すと、見慣れたソファに机、
そして高々と沢山並んだ本棚。
……太宰さんの執務室で寝るなんて、私はとても失礼な事を。
「仕事中だったのに、申し訳ない」
「君が手伝ってくれるから、私の仕事がとても捗る。けれど君は少し働きすぎ、ちゃんと休めているのかい？」
太宰さんの直下へ入ってから、
私の仕事は殆どが太宰さんの身辺管理、書記のようなもので、
たまに簡単な取引を行うくらいのものだった。
それも今迄と違って、すぐに終わるような仕事だ。
…きっと太宰さんが、色々と調整してくれているのだろう。
喫茶店での勤務がない日は、
此処へ来ては太宰さんのお仕事を可能な限りで手伝う。
そんな日々に今は落ち着いていた。
「……太宰さん、本当にありがとう」
「どうしたんだい？急に。こちらこそありがとう、だよ。」
太宰さんはそう言って微笑み、
私の頭をガシガシッと撫でると自分の机へ戻って行った。
「さあーて、溜まりに溜まった報告書の続きをしないと」
大きな声でそう云い、大きく伸びを太宰さんを横目に、
少し乱れた髪を手櫛でササッと直し、
太宰さんが用意してくれた、私の仕事机に向かった。
「そうだAちゃん、この報告書を終わらしたら食事へ行こう？」
「……お寿司が食べたいかな」
「フフッ…判った、決まりだね」
太宰さんの元で仕事を初めて早3ヶ月。
彼のお陰でこんなマフィアの世界でも、
少しだけ闇から解き放たれた気がしていた。
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作者名：ぬん | 作成日時：2023年10月1日 0時
