ヒカリノサキ。 (ページ38)

今日:17 hit、昨日:6 hit、合計:1,034,066 hit

＊38 ページ38

藤ヶ谷さんと

キス、してしまった。

「.......、」

お風呂に浸かって、

ぼんやり考えてたら

顔が熱くなってくる。

「........キス、された...」

思わず逃げ出しちゃったけど

あんなの......ダメだ、//

ていうか、なんで男の人って

簡単にキス─────.....

「っ、も.....、イヤ、」

"利用しろよ"

そんなの絶対ダメなのに。

でも、美和さんの事が

頭を過る。

失礼だけど

青山さんの時とは

比べられないくらい

本当に......終わりな気がする。

.

2年前のあの日、

美和さんに頭を下げて

事務所に戻ってから

報告だけして家に帰った。

帰る途中、玉森さんの

マンション近くの公園に

傘もささないで、

ボーッと座ってる人がいて。

『っ、玉森さん？！』

気になって駆け寄れば

それは、玉森さんで。

玉『........、っ何...』

『.......風邪、引きます』

玉『明日休みだし、いいよ』

雨に濡れてて

泣いてるのか、どうなのか

それすらもわからなくて。

玉『........別れたく、ないっ』

『...』

玉『っ、....何で、

....美和.....ごめん、』

『...』

私は彼に傘をさすのをやめた。

抱き締めてあげることも

声をかけてあげることも

何も出来なくて、

ただただ、一緒に雨に濡れて

彼の涙は雨なんだって

そう言い聞かせて立っていた。

.

「玉森さんが泣いてたの、

あれ以来見たことないや...」

それだけの事だったんだよね。

玉森さんは

そのあと一時は荒れてて

来るもの拒まず、な時もあったり

だけどいつだったかな

半年くらい経って

玉森さんの誕生日の前後で

また前みたいに

ちゃんとしてた気がする。

あまり覚えてないけど、

北山さんも心配してたし

私も見るに見かねて

なんか言ったような気もするけど

忘れちゃった。

「.......まだ、好きなんだなぁ...」

あの頃の

玉森さんを思い出して

美和さんとのことを想うと

やっぱり

切なくて、苦しくなるよ。