苦くて、甘い。3 (ページ11)

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車のなか、

拓巳はいたって普通で。

具合大丈夫？、とか

寝てていいよ、とか

ほんとに優しくて。

私もそれに甘えて

寝かせてもらっちゃった。

送ってもらって

今日は帰るね、って

そう言った拓巳に

ちょっと、ほっとしたりして

.

「.......私、さいてー....」

何も考えたくなくて

すぐにベットに入った。

＊＊＊＊＊＊＊

.

仕事の時は、

余計なことなんて

何も考えないで没頭できる。

今日も、

ひたすら仕事をこなして

もう、夜の9時過ぎ。

梓「Aー？もう上がれそう？」

「あ、はい。あとこれだけです！」

梓「んー？それいいわよ？

私が明日やっとくから

....って、A？」

「はい？」

梓さんに呼ばれて

近くまで寄ると、

おでこに手を当てられて。

「梓さん？」

梓「...A、熱あるでしょ？」

「へ？」

確かにちょっと

ダルいとは思ってたけど、

熱────あったのかな？

近くにある梓さんの顔が

少しずつ、ぼやけてく

あ、嘘────、

ちょっとやばい....かも。

.

.

ふわふわとした、意識のなか

優しい手が髪を撫でて

ゆらゆらと揺れるの。

安心する、懐かしくて

大好きな香りに包まれて

高校の頃の思い出が

ほどかれて、

.

「.........傍に、いて....」

夢の中で、泣いてた

あの日の自分。

何度、忘れようとしても

苦しくて────

蓋をするしかなかった、

幸せな想い出だって

たくさんあったのに。

.

『............いるよ、』

はっきりしない意識のなかで

そっ、と手を包まれる感覚。

その温もりに、安心して

深く─────夢に堕ちていた。