Astilbe Ⅱ (ページ8)

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#2 ページ8

「今までずっとありがとう。もう、大丈夫…汐恩が韓国に行っちゃっても私、ちゃんと生きていけるよ？」

少しだけ声が震えた

「声、震えてるやん」

「震えて、ないもん」

強がりでそう言った

ここでちゃんとしなきゃ、汐恩はまたその優しさで自分を犠牲にしてしまう

「本当に、大丈夫なの。汐恩がそばにいなくたってちゃんと生きていけるの…」

危うく涙が出そうになって下を向いた

「A」

「なあに…？」

顔を見られたくなくて、俯いたまま返事をした

　

「俺の方見て」

その言葉には従えなかった

ただでさえ泣きそうなのに、今汐恩の顔を見たら耐えられないかもしれない

そう思っていると汐恩の両手で優しく顔を包み込まれて上を向かされた

「ほら、やっぱ泣いてるやん」

そう言って汐恩は優しく微笑むから、我慢してた涙が溢れてしまった

「Aは俺が他のことを犠牲にしてるって思ってるかもしれんけど、それは違う。俺が好き好んでAのそばにいようって思ったんや」

「…なんで」

「約束したからな。それに好きな子のことは守ってあげたいのが男やん」

言葉が出なかった

「誰になに聞いたんか知らんけど、韓国行くのは迷ってる。でもAのせいじゃない。Aを置いていくのは心配やけど、他の面での心配事もある」

「…でもな、俺挑戦しようと思う。せっかくのチャンスやから」

「…うん」

「絶対にチャンス掴んで、夢叶えて、ちゃんとAのところに帰ってくる」

よかった

汐恩はちゃんと自分の道を選んでくれた

「絶対にアイドルになってね」

「…おん」

私のこと、忘れないで

そう言いたかったけど、これ以上汐恩を縛りたくなくて言うのをやめた

どうか、汐恩の選ぶ道が幸せでありますように

そう希うことは、許されますか？