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「あ、か、影山くんっ」
くるりと帰路の方向へ踵を返すその背中を、
思わず上擦った声で呼び止めた。
「…?」
「ごめん、…ちょっと待って」
彼のジャージの裾を掴むという柄にもなくかわいいことをして、クッと喉に力を込める。
誕生日を知ったのは、付き合い始めた頃。
最近までは「適当に何らかで祝うぞ〜」なんて漠然と考えていたが、ここ数週間になると、誕生日という特別な日がもう少しでやってくることに何かの意味を感じていた。
最近私の中で大きく変化した影山くんへの気持ち。
『伝えるなら、ここだ』と。
「……………」
「?Aさん?」
引き留めたくせに口を閉ざしてしまう私を見て、首を傾げる影山くん。
「…っくしゅっ」
「あっ、え、大丈夫!?」
「いや、ただのくしゃみですけど…」
今は春高前だということをふと思い出す。
風邪を引いたらいけないという先ほどの影山くんの発言は、私の心配も兼ねつつも春高前に体調を崩していられないことを表していたのだろう。
「…ごめん、やっぱりいい。帰ろ?」
ここぞというこの瞬間に一歩踏み出せない自分の情けなさに胸を痛めながらもやはり首を振って歩き出そうとする。
が、影山くんは足を動かそうとしない。
「なんでですか?聞きますよ」
平然と、私の目をまっすぐ見つめながらそう言う姿に、なんだかきゅっと心臓のあたりが高鳴った。
「でも早く帰りたいよね?くしゃみしてたのだって風邪の前兆かも、」
「一回くしゃみしただけで風邪は引かねえッス」
「そりゃあそうだけど…まあ、私のは今日じゃなくてもいいから」
「いや、今日じゃないと駄目じゃないスか?」
「え?なんで?」
譲り合いに見えて意見の押し付け合いな私たちの会話に、周りにいる人たちの視線が集中する。
普段なら「そうすか」と受け流されるパターンなのに、今日はなぜかしつこい。
「Aさん、見たことねえ表情してます」
どくんと鼓動が跳ねた。
そ、それは顔が赤いとか、緊張でガチガチとか、そんなんだろうか。影山くん、もしかしてもう何言われるか勘づいてる?
自分じゃわからない。私今、どんな顔してるんだ。
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ゆり(プロフ) - すっごい好きなお話しです!続き楽しみにしてます! (2023年3月14日 21時) (レス) @page47 id: 203fcc8e94 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - すっごい好きすっごいなんかもう好き(語彙力とは)、、、最初からここまで一気読みさせていただきました!1話1話の内容がとても面白くて、もっと読みたい!って思えました!!!!! (2022年1月27日 2時) (レス) @page47 id: 1a6dd63888 (このIDを非表示/違反報告)
まじま。(プロフ) - このままここで続けて欲しいですうう、、。ほんとにこの作品すごく好きです応援してます!!!!! (2021年3月23日 11時) (レス) id: 605f4aa0b2 (このIDを非表示/違反報告)
のろ(プロフ) - あわわわわわー!オチが上手くいかない感じがすごい好きです。応援してますー!! (2021年3月16日 22時) (レス) id: 0a1b5d200f (このIDを非表示/違反報告)
ik13ttm(プロフ) - わああああああああああああああついに!!正真正銘の両思いになりましたね!おめでとう!!!もうこの話好きすぎてまだ全然完結しないっていうお知らせめちゃくちゃ嬉しいです…(つД`)ノ (2021年3月16日 15時) (レス) id: a5a5b9bef4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みずかわ | 作成日時:2021年1月18日 0時