押せば成る【影山飛雄】【４】

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「七海、一旦落ち着け」

「…黙れ…」

「だいぶ凶暴化してんべ！温厚七海はどこいった！」



ぽんぽんと優しく頭に置かれる手に安心する。

ゆっくり顔を上げると、スガの表情は避けられる前の優しいものに変わっていて、なんだかまた涙が出そうになった。



「お前の気持ちはわかったよ。ごめんな、ガキみたいなことして」

「…本当だよ…」

「七海の言う通り、ただ自分が辛いのから逃げてただけなんだと思う。あと、思ってもないこと言ったし」

「…どれのこと？」

「このまま引退してもいいって」

「……本当に思ってない？」

「思ってないよ、意地になって言っちゃった」



けらけらと笑うスガに安堵のため息をついた。



「じゃあもう避けない？」

「うん。七海が寂しいらしいから仕方なく」

「……今度は私が避ける」

「ごめんって、俺も寂しかったって」



もう一度、ぽんぽんと優しく頭に置かれる手。

仲直り。というほど喧嘩をしていたわけではないが、
やはりこの軽口の叩き合う感じは落ち着く。



「……影山とのこと、応援してるからな」

「…うん」

「幸せになれよ？」

「かっこいいね」

「はは、失恋してる時点でそれはない」

「そんなことないよ」



先ほどとは打って変わってほわほわした空気感の中、
突然空き教室の扉が勢いよく開いた。


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