押せば成る【影山飛雄】【３】

２８- 乗れば浸る ページ22

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「…なんか、ぬるっと付き合ったよな、お前ら」



翌日の昼休み、前の席に座るスガが私のほうを向きながらそんなことを言ってきた。



「そう？」

「うん。なんかこう、もっと…盛大にって感じを予想してたからさ。なんなら白鳥沢戦おわったすぐ後とかに告白すれば盛り上がったのに！数日置きかよ！」

「うーん、まあ影山くん疲れてたからね。そんな余裕なかったんじゃない、知らんけど」



次の授業の予習をしながら答えると、「あっ俺もしなきゃ」と当たり前のように私の予習ノートを写し始めるスガ。

…確かに、あれだけアピールされて幾度も部員まで巻き込んでた私たちの始まりとしては腑に落ちない気持ちもわかる。ていうかそもそも恋人(仮)みたいなものだし、私としても実感はそんなにない。

ただ思うのは、その(仮)が外れる時はいつなのか。

ひとつの大きな区切りとしては私が影山くんを本気で好きになった時なんだろうけど、彼に対してはもうすでにそれなりに好意はあるからなあ。

突然「あっ好き」となる瞬間なんてあるのだろうか。



「七海よく聞け。影山との進み具合は逐一報告することをここに誓いなさい」

「あなたは誰ですか？」

「恋のキューピッドです」

「……予習終わった？」

「あ、うん」



「さんきゅー」と私の予習ノートを返してくる恋のキューピッド。

バレー部員はもちろん、特にスガと田中は全力応援してくれてた感はあるからあながち間違ってはいない。


とはいえ、進み具合か。

影山くんにそんな概念が存在するのかはわからない。

私へのアピール具合からして、きっと恋愛に奥手というわけではないのだろう。いやあれが奥手なんて言わせてたまるか。


けど、たぶん…

ただ単純に、彼にはそういった知識がないのだ。

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