押せば成る【影山飛雄】【３】

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帰路を半分くらい歩いた時、ふと影山くんが「あの」と口を開いてこちらを見る。



「…俺、付き合うって何したらいいかまだよくわかってないんすけど」



するとまたまた素直で面白いことを言ってくるので、この子は何回私を笑わせにくるんだと心の中で言う。

私が初めての彼女ではないはずなのに、そんな恋愛初心者みたいな…いや、ある意味初心者なのか。



「うーん、…手とか繋いでみる？」

「え"っ」

「なんだよその反応は」

「……いいんすか、そんなの」



私の提案に肩をすくめた影山くん。



「いいんすかって…もう付き合ってるんだし」

「……………」



はい、と手のひらを上にして差し出せば、
おずおずとその手を握り返してくる。



「…影山くん、それ握手。逆の手で握って」

「うス」

「うん、そうそう」



ぎゅっと握られたその手は一気に体温を持つ。

影山くんの手、めちゃくちゃ熱い。顔の赤さに比例して熱持ってる。

普通に繋がれた手を握り変え、指を絡めて恋人繋ぎにしてみれば、不思議そうな顔をする影山くん。



「こうやって繋ぐのもあるんすか」

「うん。恋人繋ぎって言うみたい」

「普通に繋ぐのしかやったことなかったんで、初めて知りました。なんか離れにくいっすね」

「…………」



彼の天然さというか、世間を何も知らない感じ、まあ嫌いではないけれど。

普通こういう場面で元カノ(多分)の話をするのはタブーなのではと冷めた目で見つめるが、気づく兆しもないので諦める。

まあ彼もそれは自覚しているようだし、それを踏まえた上で受け入れてくれそうだから私がいいと言ってくれたこともあるし。

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